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ソルティ・ドッグ

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塩日記2020
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2020年5月の記事一覧

表紙絵で関係性を読む

村田真優『ハニーレモンソーダ』の中身を一通り(?)(?)(?)読みふけった私であるが、今は表紙を眺めて物語に想いを馳せるという遊びに興じている。 いちおう、美術作品を読む勉強をしていた人なので、そこにセリフがなかろうとストーリーが克明に描かれていなかろうと、私は楽しめるんだよね!!!というおのれの強みを大いに生かした遊びである。 写真と共にnoteで熱弁しようと思ったが、著作権がこわいので、文章で熱弁する。表紙が気になる人は『ハニーレモンソーダ』全巻買ってくれ。 * 本

せめて、それはダメだとはっきり言えるあなたになってよ

私をいじめていた彼女たちを許せるか。15年以上自問している。 この頃は、ゆるす、とはどういうことなのだろうかと思う。今でも嫌いかと聞かれたなら「嫌いではない」と答える。きれいな顔をして恨んでいるんでしょうと質されても「そんな感情は摩耗しきったよ」と言う。彼女たちの不幸せを願わずにはおれないか? ――そんな呪いを後生大事に抱いて生きて、私は幸せでいられるだろうか。だから答えは「まったく、全然」なのである。私は幸せで、彼女たちはなんということもなくふつうに生きていて、それが受け

祈るしかできない

22歳の女の子が死んだ。知らない子だ。今まで1度も道が交わったことがないのに、死んだあとで知るなんてひどい話だ。人生が交錯する必要のないまま、一生知らない相手でいたかった。こういうとき、いつも思う。 土曜日の昼間は、そのことをぼんやり考えているうちに過ぎ去ってしまった。運動不足だから歩く口実を作ろうと、少し遠いスーパーにある宅配ボックスに荷物の配達を頼んでいなかったら、夜もソファの上で蹲ったままだったかもしれない。荷物を受け取りにいかないと。16時半を過ぎてようやく動き出し

国語の読解力問題についての誤解

国語の授業において「作者の意図を問う」読解力問題につまずいた人が、世の中にはたくさんいるらしい。「作者の気持ちなんか知らないよ」系言説の多さにときどき驚く。必要性を理解できないまま、みんな勉強しているのかもしれない。 それから、なんだか、書く力を育むことばかりが重視され、読む力が欠落しているんじゃないかと思う。 たびたび言っているけれど、「読むこと」は技術である。 国語の読解力問題は、話の解釈を求められているのではない。作者の論点を整理して、その意図を正確に理解する「技術力

グリコはひとつぶ300メートル

「ひとつぶ300メートルおいしくてつよくなるってどういう意味ですか?」 高校生というのはバカである。偏差値の話ではない。箸が転んでもおかしいお年頃という意味だ。毎日どうでもいいことで盛り上がって生きている。 私たちは、創立100年をゆうに超える由緒正しき女子高に通っていた。2年生だったか、3年生だったか。親友とけんかする前のことだったから、たぶん2年生のときだと思う。放課後、いつもの5人組で集まって、優雅にお菓子を食べていた。もしかしたら、朝の小テストの補習があったのかも

書きたいことを書いていれば、見つけてくれる人がいる。

5/14、ついに『ハニーレモンソーダ、蜂蜜多めで。』が『「少女漫画は顔だけ」の真髄』のページビュー(PV)数を超えた。 後者のPVが多いのはわかるのだ、なぜならnote編集部が取り上げてくださったから。たぶん私のどの記事よりも人の目につきやすい仕様になっている。だが前者は謎だ。冒頭で「三浦界の顔面がやばい。」と斬り込んだあとは、ほとんど私の日記に近い記事だし、実際、後半は有料にしてとてもバカバカしいことを書いている。100円どころか1円の価値もない…… 私はあまり自分の文

「おもしろい」への扉はひらかれている

作家の岸田奈美さんが主催されているキナリ杯がおもしろそうだ。開催ページを何度か読み返しては、私もなにか書いて参加したい欲が湧いている。 リスペクト賞なるものが増設されていて、しかも数が多いのでちょっと笑った。「おもしろいものが読みたい」という岸田さんの間口は本当に広そう。だけど、おもしろいものってなんだろう? 扉の数が多く設置されていて、どの入口からでもパーティーが繰り広げられている大広間へつながっているのだと理解しても、それはかならずしも「ドレスコードはありません」を意味

感性のさきで作品に向き合う、人文学の紡ぐ豊かさのこと

5月2日の0時04分、りぼん6月号を読んだ。0時ジャストじゃないのはKindleの配信に誤差があるせい。ダウンロードに時間が掛かると、なんとなくギリギリとしてしまう。早くしてほしい。発売日に本屋へ駆け込んで、そわそわしながら購入して、家に着いたら急かされるように読んでいた子どものころを思い出している。6月号、表紙、巻頭カラーの『ハニーレモンソーダ』。 単行本になるまでnoteではネタバレをしないでおこうと思うけど、私、やってしまったな? 笑ってしまった。ごめんむらまゆ。愛が

5月2日、雷鳴と愛

煩わしい心すら いつかは全て灰になるのなら その花びらを瓶に詰め込んで火を放て 今ここで  -米津玄師「TEENAGE RIOT」 5月2日が、365日のなかで一番嫌いだった。 長期連休の中日。2020年は土曜日だけど、ほとんどの年は、謎の平日。休ませろよ。何で休みじゃないんだよ。小学生のときからずっとそう思っていた、5月2日。毎年決まって、父と母は、職場の歓迎会で不在だった。何度となく勤務先を異動してもそうだった。私自身が社会人になってからもなぜその日が飲み会に設定され