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#読書

【文庫本の世界】カバーの先の装丁デザイン

はじめに 私は、本を文庫で購入することが多い。 ひとつは経済的な理由からだが、もうひとつには、本棚に並べた時の背表紙の統一感が好きだという理由もある。 装丁の世界で言えば、文庫本よりも単行本の方が、デザインや用紙に趣向が凝らされている。カバーを外した本体表紙においても、その作品独自のデザインがあしらわれており、唯一無二の世界が広がっている。世の中には、カバーを取った表紙デザインだけの展示会も存在するくらいだ。 しかし。 文庫本には文庫本の、装丁の良さがある。定められ

読みやすさとは何か、ということについて。

この文章を読んでいるあなたは、本を読むのが得意ですか? 私はというと、どちらとも言えません。昨年、本を一冊出版したくらいなので、今でこそ本は好きですし読むのも早くなりましたが、子どもの頃はむしろ苦手でした。 なぜ苦手だったのかと考えると、端的に言えば「めんどくさかったから」です。大量の文字情報を目の前にすると、それだけでウンザリして眠くなってしまい、面倒くさがり&せっかちだった私は、あらすじと結果だけ分かっていればいいじゃないか、と思っていました。 そもそも、本とは何な

作品を殺すのは誰か

私には好きな小説がある。 番外編を合わせれば一〇冊を越えるシリーズ作品で、登場人物の一人一人に奥深い設定があり、魅力的で、主人公とともに謎を解き明かしながら進むストーリーも臨場感があって大好きだ。 しかしそのほとんどがすでに絶版となっており、新品を入手することは困難になっている。また、シリーズはまだ完結しておらず、続編は存在するとのことだが、その公開・発売には至っていない。 そのシリーズ作品と、それを執筆している作家と、ファンの話をしようと思う。 とても長くなってしまったので

嫌われたのは、誰かに愛される証拠。「誰からも好かれる者は誰からも深く愛されない」

文章は、誰にでも読まれるように書こうとするとかえって誰にも読まれなくなる傾向がある。刺さる文章を書くには、具体的な人を思い浮かべてその人に向けて書く。文章に携わった当初からずっと、そう言われてきた。 きっと、人の好き嫌いも一緒だ。誰からも好かれるを目指そうと思うと、自分の意思や思いを伝える場所が少なくなる。相手の質問に対して、正解を探してしまう。すると自分から出てくることばはとても一般的で、誰が聞いても違和感がない。そしてその代わり、記憶にも残らない。 誰からも好かれる者