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【読者感想文】ひと


ひと 小野寺史宜さん


いや~~~~~。おもしろかった。


正直、この感想に限る。

「いや~~~おもしろかった。」以上。

だから今回の読書感想文は、短くなりそう。だってもうそれ以上の言葉がない、「いや~~~~おもしろかった。」


‥‥だけど、書くぞ。

何が良かったのか考えて、記しておきたいからね。






ドラマを見ているみたいに、スラスラと話を追える。だけど、ドラマみたいな大きな出来事は起こらない。というか既に起こっていて、その状態からお話は進んでいく。


人を傷つけるのも、癒すのも、悲しくさせるのも、喜ばせるのも、絶望させるのも、希望を与えるのも、ぜんぶぜーーーんぶ、やっぱり”ひと”なんだよな。そういう意味での、『ひと』というタイトルなのかな。



あらすじは、こんな感じ


高校生の時、父親を事故で亡くした聖輔。女手一つで、鳥取から東京の私大へ進ませてくれた母だったが、その母が急死した。突然たったひとりになった、20歳の聖輔。奨学金を返せる自信もなく、大学は中退。現実を受け入れるのに必死で、なにもしない日々を送っていた。そんなある日、空腹の中歩いていた商店街で、総菜屋さんで売っている50円のコロッケと出逢う。しかし聖輔は、注文している途中に横から入ってきたおばさんの威圧に負け、ラスト一個のコロッケを譲ってしまう。――そこから、彼の生活は大きく変わっていく‥‥。





主人公の聖輔、もうね。間違いなく、絶対に、イイ奴。笑


自分の利益とか、そういうの関係なく、すぐに譲る。

コロッケも譲るし、道も譲るし、5万円で買ったベースだって譲る。友達に合いカギだって渡して、自分の部屋を自由に使わせちゃう。



そして、人へのリスペクトを忘れない。距離感とか、言葉とか、態度とか。そういうものに全部全部、聖輔の誠実さがにじみ出ているな~と思う。



例えば、このシーン。

友人の家に遊びに行った時に、友人の母からスリッパが出された時。


くつを脱いで三和土から上がると、スリッパを履かされた。いや、履かされたは言葉が悪い。スリッパを出してもらった。


言葉にして「履かされた」と言った訳でもないのに、頭の中で「履かされた」と思っただけなのに‥。そこにちゃんと自分で「出してもらった」と訂正している。誰も知らないのにさ‥‥。

自分の頭の中でも、ちゃんと人へのリスペクトを忘れていなくて、すごいなと思う。きっとこれは忘れてないとかじゃなくて、癖というか、もうそういう性格なんだろうな。



はあぁ、ほんとイイ奴。


こんなイイ奴だから、聖輔はたくさんの人から「いつでも頼ってね」と言われるのだろう。社交辞令とかではなくて、心から彼はそう言われている。

『人を頼れる』というのは才能だ。それと同じくらい、『いつでも頼ってね』と言われることも才能なのかもしれないな。才能というか、なんだろう、努力の結果というか、聖輔の人となりの結果なんだろうな。



正直者がバカをみるだなんて、そんなことはない。一つ一つの出来事でみたら、バカを見ることもあるのかもしれないけれど、でも絶対最後には、幸せになれると思う。正直者な聖輔と、彼のまわりの人々をみて本当にそう思った。



僕は21歳。急がなくていい。一つ一つだ。急がないが、とどまらない。そんなふうにやっていけたらいい。先は大事。でも今も大事。先は見なければいけない。でも今も疎かにしたくない。だって僕は、生きている。



大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない。



この世の全てはひとだよね、と信じていきたいな。

いや~~~~~~おもしろかった。とても良かった。また読むぞ。











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