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法律家が解説:松本人志の裁判はどうなるのか

こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。
今回は、現在週刊誌に対して訴訟を起こしている松本人志さんに関して、法律家の観点から解説していきたいと思います。

まず以下の文章が、報道が出て間もない今年1月に私が書いていた記事になります。

昨年の12月に週刊誌で性的交渉に関する記事が掲載されたダウンタウンの松本人志さん。先日(1月8日)、「裁判に注力するために芸能活動を休止する」との発表を行いました。

今回はこの件について法律家としてお話しできる範囲で解説したいと思います。もちろん、記事の真偽についても不明ですし、報道以外の情報を持ち合わせてはいません。あくまで、一般論として裁判の方向性を推測するものです。

まず、週刊誌の記事は松本氏が女性に対して性的交渉を迫ったという内容で、見出しには「恐怖」という文字も含まれていますので、嫌がる女性に対して無理やり性交渉を迫ったと取れる内容です。

そうだとしますと、当然、松本氏が検討している裁判というのは名誉毀損に関する民事訴訟ということになるでしょう。

名誉毀損とは、「不特定多数の人に対して人の社会的評価を低下させるような具体的な事実を述べること」です(コラム「名誉毀損と侮辱の違い」参照)。今回の記事は間違いなく外形的には名誉毀損に該当する記事といえます。

ただし、外形的に名誉毀損に該当する行為であっても違法にならない場合があります(「違法性阻却事由」といいます)。次の3つを満たす場合は違法行為ではないことになります。

①公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
②専ら公益を図る目的に出たこと(公益目的)
③摘示された事実が真実であると証明されること(真実性)


本件では、お笑い界のトップクラスの人物に関するものであり、芸能界に存在する闇の部分を告発するのが目的だということであれば、①の公共性と②の公益目的は認められるだろうと思います。

問題は、③の真実性です。報道内容によると松本氏と女性が部屋で二人きりの状況での出来事が問題となっていますので、週刊誌側が真実であることを証明するのは極めて困難です。

しかし、最高裁の判例によると、「真実であること」を証明できなくても、十分な根拠に基づいて記事を書いた場合(「真実相当性」といいます)には違法ではないとされています。

したがって、週刊誌側が十分な取材を行ったか否かが主要な争点になります。ここまでが、名誉毀損裁判の一般論です。

ところで、今回の報道で、私が特に注目しているのは、松本氏が芸能活動を休止すると発表した点です。たしかに、裁判に注力するとなると大変な時間と労力が必要です。しかし、裁判を行いながら芸能活動を行っている人はたくさんいます。

松本氏が芸能活動を休止すると発表した理由を私なりに考えてみました。一般的に民事裁判で名誉毀損が認定された場合、損害賠償額は多くても200万円から300万円程度に過ぎません。

あくまで推測に過ぎませんが、仮に、松本氏が本当に事実無根であり徹底的に週刊誌側を糾弾したいということであれば、芸能活動を休止したことにより発生する営業損失を請求するつもりかもしれません。

仮にそれが認められれば、松本氏ほどの人物であれば数億円単位の損害賠償が認定される可能性があります。

当事務所HPのコラムより
https://x.gd/FISRw

さて、皆さんもご存じかもしれませんが、つい先日、松本氏が芸能活動を休止中の損害についても請求する方針であることが分かりました。また、今請求している慰謝料の額は見直すとの報道もあり、路線を切り替えたようにも見えます。

従ってこれからは名誉毀損による損害賠償と、その休業中の営業損失をめぐった争いになると考えられます。長引きそうな裁判ですが、引き続き注目していこうと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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また次の記事でお会いしましょう。

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