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遺言書が出てきたが、自分の取り分が少なすぎる!→それ、遺留分の侵害かもしれません

こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。

被相続人が亡くなり、遺言書が出てきて、自分の取得分が明らかに少ないときは「私の遺留分が侵害されているのではないか?」と考えることができまう。(※こちらから遺留分に関する記事もチェック)

自分の遺留分が実際に侵害されているのか、侵害されているとして幾ら侵害されているのか、ご自身で計算できるでしょうか?
本記事では、遺留分の侵害の有無、遺留分の侵害額を判断する方法について解説します。

遺留分を算定するための財産の価額を算出する

まず、「遺留分を算定するための財産の価額」というものを算出します。
民法1043条では「遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。」と規定されています。
上記のうち「その贈与した財産の価額」については民法1044条で詳しく規定されています(条文の引用は省略します)。
その結果を計算式で表すと、原則として以下のとおりとなります。

◆遺留分を算定するための財産の価額
=相続開始時における被相続人の積極財産の額
+相続人に対する10年以内の特別受益の額
+第三者に対する1年以内の生前贈与の額
-被相続人の債務の額

個別的遺留分割合を算出する

上記で「遺留分を算定するための財産の価額」を算出したら、次は、自分の「個別的遺留分割合」を算出します。
「個別的遺留分割合」は「総体的遺留分割合」に「法定相続分の割合」を乗じて算出します。
「総体的遺留分割合」は原則として1/2ですが、例外的に相続人が直系尊属(親または祖父母など)だけの場合は1/3です(民法1042条1項)。
総体的遺留分割合に自分の法定相続分の割合を乗じて「個別的遺留分割合」を算出します(民法1042条2項)。
計算式で表すと以下のとおりとなります。

◆個別的遺留分割合
=総体的遺留分割合
×法定相続分の割合

具体例でみていきましょう。
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人(長男と長女)の場合、

①「総体的遺留分割合」は原則に従って1/2です。
②「法定相続分の割合」は、
  配偶者:1/2
  長男 :1/4
  長女 :1/4
  ですので、
③「個別的遺留分割合」は、
  配偶者:1/4(←1/2×1/2)
  長男 :1/8(←1/2×1/4)
  長女 :1/8(←1/2×1/4)
  となります。

なお、兄弟姉妹には遺留分は認められませんのでご注意ください(民法1042条)。

自分の遺留分の額を算出する

自分の遺留分の額を算出するには、上記の「◆遺留分を算定するための財産の価額」に「◆個別的遺留分割合」を乗じます。
計算式で表すと以下のとおりとなります。

◆自分の遺留分の額
=遺留分を算定するための財産の価額
×個別的遺留分割合

遺留分侵害額を算出する

さいごに、遺留分侵害額を算出します。
遺留分侵害額の算出方法は民法1046条に規定されています。条文は長くて複雑なので省略しますが、計算式で表すと以下のとおりとなります。

◆遺留分侵害額
=自分の遺留分の額
-遺留分権利者(自分)が受けた贈与・遺贈・特別受益の額
遺産分割の対象財産がある場合において遺留分権利者(自分)の具体的相続分に相当する額
+遺留分権利者(自分)が負担する債務

まとめ

以上、遺留分の侵害の有無、遺留分の侵害額を判断する方法について解説しました。
被相続人に債務がなく、特別受益などの修正要素がない場合は比較的簡単に計算できます。
しかし、被相続人に債務がある、特別受益がある、遺産分割対象財産がある、などの場合はかなり難しくなります。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。

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