勝手に婚姻届/離婚届!?
こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。
ときどき、「勝手に婚姻届を出された」という話を耳にします。こういう場合、届出を出された人はどうすればいいのでしょうか。また、届け出た人はどうなるのでしょうか。
まず、勝手に婚姻届を出す、ということは、たいてい署名を偽造しているわけですが、役所は偽造かどうかまでわかりませんので、届出は受理されて戸籍に記載されてしまうことがあります。
しかし、婚姻をするには当事者双方の「婚姻意思」が必要です。
「婚姻意思」というのは、「夫婦共同生活を営もうとする意思」です。
「形だけ夫婦になるため」という理由は「婚姻意思」とはいえません。
したがって、勝手に婚姻届を出されたのであれば、少なくとも一方当事者の「婚姻意思」がないので、その婚姻届は無効ということになります。
では、勝手に婚姻届を出された人はどうしたらいいのでしょうか?
「私、婚姻意思はないので無効です」と役所に言っても戸籍は変わりません。
裁判所で婚姻無効の調停や訴訟をする必要があります。
一方、勝手に婚姻届を出した人は、有印私文書偽造罪(刑法159条1項・5年以下の懲役)、偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項・5年以下の懲役)、公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項・5年以下の懲役)などが成立します。最高刑は懲役5年です。絶対にそんなことはしてはいけません。
それでは「離婚届」はどうでしょうか。離婚についても「離婚意思」がないのに離婚届をすれば無効ですし、犯罪にもなります。
これだけいうと、一見、婚姻届と同じように思います。
しかし、「離婚意思」については少し「婚姻意思」と違う面があります。
「離婚意思」とは、「法律上の婚姻関係を解消する意思」のことをいいます。
先ほど、「婚姻意思」は「夫婦共同生活を営もうとする意思」であり、「形だけ夫婦になるための意思」は「婚姻意思」ではないと書きました。
これに対し、離婚の場合は、「形だけ離婚する意思」でも「離婚意思」が存在することになります。
たとえば、「形だけ離婚するけど、このまま一緒に住む」という場合、「離婚意思」があることになります。
どうしてこのような違いがあるのでしょうか。
仮に、「婚姻意思」と同じように、「離婚意思」を「夫婦共同生活を辞める意思」と定義するとどうなるでしょうか。
離婚した後の元夫婦の関係には様々であり、離婚しても友人関係でいる場合もあるし、離婚しても週に1回会うという関係もあるかも知れません。毎日、子どもとご飯を食べるために元夫が家に立ち寄ることもあるかも知れません。
そう考えると、何をもって「夫婦共同生活を辞める」ことになるのかはっきりしないのです。
先ほど述べたようなケースが全て無効になったり犯罪になったりするのは好ましくありません。
だから、離婚の場合の「離婚意思」とは「法律上の婚姻関係を解消する意思」ということになっているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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また次の記事でお会いしましょう。
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