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ママの子宮に戻りたい

私は17年前に娘を帝王切開で出産した。今でも私の下腹部にはその時の傷が残っていて、娘は私のその傷の辺りに頬を当てながら

「あー、ママの子宮に戻りたい。」

と冗談を言う。

「こんなに大きな子はお腹に入れんよ。」

と私はすかさず返す。


娘はときどき、ママの子宮に戻りたい、と冗談交じりに言うので、理由を聞いてみると、ママの子宮は安心で安全の場所だから、と教えてくれた。

妊娠中お腹の赤ちゃんは母親とへその緒でつながり、母親の声を常に聞きながら、大切に育てられ、母親にとっても幸せな時間である。

私は妊娠初期から娘が生まれるまでつわりが続き、さらに持病があったため、毎日朝晩2回の注射を受けながら妊娠期を過ごした。あの頃はあまりにも身体がしんどくて「早く出産の日を迎えたい」と思っていた。

でも娘は私のお腹の中ですくすくと育ち、1988gとやや小さめだったけれど、元気な産声を上げてくれた。

子育ては立派なものだったとは決して言えないけれど、娘に「ママの子宮に戻りたい」と言われるたびに、今までの子育てを認めてくれているようにさえ感じる。

冗談交じりに言ってくれる娘の言葉に、私は日々救われている。


私の子宮に戻らなくても、私はこれからも、娘にとって安全で安心できる存在でありたいと思う。




ヘッダーはあまのこさんのイラストです。以前から目に留まっていたのですが、記事を書き終わってすぐに、あまのこさんのフォトギャラリーに飛んでいき、使わせていただきました。ありがとうございます。

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