21話(最終回)
「ごめんね、彼氏いるんだよ」
うん。分かった。
「彼氏いるって気づいてたよね?それでも言ったの?」
まーね。
俺は本気を出して後悔しないために、今日来たからね。白馬に乗って。
「ありがとう。カローラⅡが白馬に見えたかも」
センパイ、バイバイ。
「うん、お互い頑張ろうね!」
彼は車で帰る45分間が、何時間にも感じた。
ああ、これが『悲しい』という感情だ。
小学生時代に遭ったイジメで、抑えて閉じ込めてしまった感情だ。
こういうとき、普通は涙が出るのか?
でも今はこの感情を思い出して、新鮮な気分だ。
それにしても、スッキリした。
県大会に行ったときと同じ達成感だ。
よし、決めた。
俺、将来、水泳の先生になろう。
この1年間、フリーターとして旅をして、来年は、体育の専門学校に行こう。
オヤジとおかんに、想いを話して頼んでみよう。
この田舎を出よう。
東京に居るばあさんちに住めるよう、そっちも頼んでみよう。
ほんの小さなキッカケが、大きな未来をつくる。
すべては、高校1年生のとき、センパイに出会ったプールサイドから始まった・・・
『ねぇ、水泳やりなよ。県の大会まで行けたらチューしてあげるアハッ』
あのさ、センパイ。
世界で1番、死ぬほど、センパイが好きだったよ。
おわり
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