【poem】名前をつけてやる



ずっとずっと、自分の中のものに名前をつけてこなかった



これからは、どんな小さなものでも名前をつけてやる

そうして、愛すべき自分の願いも、思いも、夢も、なんだって叶えてやる



そう決めてからは、それはそれは幸せだった

そんな中、ごつんと重たいものにぶち当たった

途方に暮れた



素直に見ることができない

色々なものが少しずつ積み重なってできてしまったこの巨大な岩のような塊を、すぐに直視することができない

くだらない言い訳をしながら、最もらしい言葉を並べながら、どう向き合うべきかを考えた

それでも、この岩を受け止めることはできない



大切なものが、壊れてしまいそうで




できることなら、名前をつけてやりたかった

でも、あまりにも壮大なそいつとどう付き合えばいいのかがわからない

そしてまた惨めな自分をつくった

そうしては、自分がまた嫌いになった

すっかり元の自分に戻ってしまったような気分になった

そんな私を見て、彼女は言った



自分を愛することが一番だよ



ことばはわかる

けれど、自分を愛した結果が、これなのだよ

今の自分を素直に愛すというのならば、自分以外の誰かが傷ついてしまうかもしれない

そんなことになるなら、自分だけ我慢をしていれば…


それが嫌で、それをもう辞めたくて、素直になることに決めたのに

自分を愛すると決めたのに



見て見ぬ振りされ続けてできたこの岩を咀嚼し、消化し、栄養にするには時間がかかりそうだ

骨が折れる

果たしてこの巨大な何かには、名前をつける必要があるのだろうか

それよりも、居場所が欲しいのではないのだろうか



隅っこに追いやられたそいつに、ちゃんと自分の中にあるものなのだと、居場所を与えてやる

もうそこにいていいのだと


. (inspired by spitz/名前をつけてやる)


afterward

誰にでも一つはあるだろう、心の底に眠らせたもの。
それが積み重なれば重なるほど、どうにもできない恐怖を生んでゆく。
そこに向き合おうとすると、今度は自分の中の何かが壊れてしまうかも知れないという恐怖が芽生え始める。
それに打ち勝った時、そこに名前という野暮なものは必要ないのだと初めて気がつき、全てのものには名前なんてなくてもよかったのかも知れないなんて思いがよぎってしまう。
そうして、心がぎゅっとつままれたような、また名前のないものを一つ越えなければならなくなる。

けれど、それも含めて全て、名前なんていらなくて、居場所を与えてやるだけでいいのかも知れない。
そうして、カタチない名前ないものは、自分へと還ってゆくのだろう。

この詩がぼんやり浮かんだ時、タイトルはスピッツの「名前をつけてやる」というワードが浮かびました。
楽曲やアルバムからはインスパイアされていませんが、タイトルとして使わせていただきました。

名のない想いを抱きしめて
自分を愛して

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