四煎目のお茶
私は緑茶が好きだ。
一煎目、二煎目はとてもおいしい。しかし、三煎目になると、その味わいや風味が、少し怪しくなってくる。飲めなくはないが、何だか心許ない味になる。
正直、美味しいとは言えないのだが、二煎飲んで捨ててしまうのも忍びないので、我が家では一応、三煎目までは飲むことにしている。
春分の日の夕方、夫が既に三煎目を飲み終えた急須に、またお湯を入れた。それをマグカップに注ぎ、飲みながら言う。
「うーん、出がらし一号だ」
確かに、四煎目の緑茶は出がらしに違いない。
だが、この日は春分の日。風が吹くなら、木枯しよりも春一番の季節である。
「もう今日から春なんだから、冬の言い回しは、ちょっと季節外れだねぇ」
私が言うと、夫が四煎目のお茶を啜りながら、
「じゃあ、出がらし紋次郎」
そう言って、古い時代劇のタイトルをもじってきた。
だが、《一号》が《紋次郎》に変わっただけで、あまりうまい返しとは言えない。春のせいか、夫の感性もねむたく鈍っているようだ。私は淹れてもらったお茶を啜りながら、
「うーん、うまくないねぇ」
首を振る。
だが夫は、自分の発言のことだとは、これっぽっちも思っていないらしく、
「やっぱりお茶は三煎目までが限界だね」
そう言って、四煎目のお茶をちびちび飲み続けていた。
ちなみに私たち夫婦が飲んでいるお茶はこちら↓
木枯し紋次郎といえば、この方↓
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