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お気軽おせち2022

 いつかは明けちゃうんじゃないか。
 11月あたりから、そんなことを薄々感じてはいたが、本当に年が明けてしまった。

 皆様、あけましておめでとうございます。

 兎にも角にも正月である。食べて飲んで、ぐうたらが許される貴重な数日間だ。おせちを並べ、日本酒を用意し、 

 さぁ!今年最初の酒宴のはじまりである。

 今年のおせちは、昨年とほぼ変わらず、既製品を織り交ぜた、実にシンプルなものとなった。お刺身や牛肉といった豪勢なものは全く登場しない。

 まず、筑前煮
 筑前煮は、大きなゴロゴロした根菜を食べるものだが、我が家では、お酒と一緒につまみやすいように薄切りにしてある。鍋で炊くとに崩れる可能性があるので、電子レンジで加熱したあと、フライパンで汁気を飛ばす。これを、冷凍できるように小分けにしておく。冷凍するため、こんにゃく、里芋は入れていない。

 その代わり、手綱こんにゃくを煮たものを作り、里芋は小さめに切って、味の付いた出汁で煮たあと、素揚げ、もしくは唐揚げ粉をまぶして揚げたものを用意している。和風のポテトフライといったところだ。

 長いこと、エビチリと伊達巻は手作りしていたが、これを思い切ってやめてしまった。
 エビチリの代わりに、桜エビをバターで炒り、スパイス塩で味付けしたものを作っている。これが箸休め的なおつまみになって、ビールがどんどん胃に流し込まれてしまう。

 あとは、たっぷりの山椒とすりごまで和える、長門裕之のたたきごぼうと、お雑煮。このお雑煮は、青森出身の友人に教えてもらった、ささがきごぼう、長ネギ、ニンジン、大根、鳥のささ身、油揚げ、そしてちくわが入った青森風のお雑煮だ。ちくわが入るのは、穴が開いているので見通しがいいという意味の縁起担ぎらしい。
 汁の味付けは醤油のみ。これを味付けをしないで、そのまま三が日保存すれば、味噌味やカレー味などにもできる。お雑煮だけでなく、年明けうどんにも使えるから大変便利だ。たっぷりの花かつおでとった出汁を使っているので、旨味が根菜やお餅に沁み込んで、しみじみ美味しい。

 ビールやワインが飲めるように、鶏肉と豚肉のチャーシューも準備した。
 正月は四つ足のものは食べないという風習もあるそうだが、やはり豚の旨味は洋酒に合う。
 チャーシューは日常的に作るくせに、私はタコ糸で塊肉を縛るのが苦手である。今年はスーパーでチャーシュー用のネットが無料で提供されていて、非常に助かった。
 ネットを着せた鶏、豚を茹でて柔らかくしたら、ポリ袋に入れて醤油に漬けるだけ。今回は醤油ではなく、自家製の醤油麹に漬けてみた。醤油麹を使うと、麹の甘みでまったりとして、醤油漬けとは違った味わいがある。

 あとは煮卵
 グラグラ沸いたお湯に、冷蔵庫から出したての卵を6分茹でる。そうすると、ラーメン屋さんの煮卵のように、割ったとき、黄身がとろりとする。例年は漬け汁に、チャーシューを漬け込んだ醤油を使用していたのだが、今回は昨年6月に作ったラッキョウの一二三漬けの漬け汁を使った。食べてみると、少しラッキョウのスパイシーさを感じる、アジア料理っぽい煮卵になった。

 既製品は、伊達巻、松前漬け、栗きんとん、蒲鉾。頂き物の大根の甘酢漬け。そこに、旬のときに作り置きしている、赤大根の甘酢漬けも仲間入りさせてみた。真っ赤なアントシアニンの色が、実に目に鮮やかだ。

我が家には重箱がありません…。
里芋の唐揚げを置くのを忘れてしまったので追加。


 ただ残念なのは黒豆に皺が寄ってしまったことだ。今回、初めて電気圧力鍋で煮てみたのだが、早く仕上がるものの、途中で様子が見られないのが圧力鍋の難点だった。やはり黒豆はじっくり気長に、たっぷりの煮汁で静かに炊くのが良いと再確認した。
 以前なら、皺が寄ってしまったことにガックリと肩を落とし、猛然と作り直しただろうが、今回は作り直しをしなかった。食べるとき、皺の寄っていない黒豆を見つけては、
「ほら、これ当たりだよ」
 などと言って、口に運ぶのは、それはそれで楽しい。

 結婚した当初はおせちも作れるものが少なく、毎年一つ一つ挑戦していったような記憶がある。徐々に品数が増え、それらを母のところに持参したりもしていたが、結構な重量のおせちを、電車異動で運ぶのは、なかなかの重労働だった。それでも、
「上手に作るわねぇ」
 などとおだてられると満更でもない。二年前に祖母が他界してからというもの、そんな日々が少しだけ遠くなったような気がする。

 おせちで、毎回作っていたものを止めるというのは、少し思い切りがいるものだ。前回は、喪中なので質素にしようという理由があったが、今回は特に理由がない。前回と同じでは質素過ぎて、福の神が逃げやしないかと思ったが、

 20年間、自分なりに一生懸命作ってきたんだから、もういいかな。

 そんなふうに思ったら、肩の力がうまい具合に抜けた。中年夫婦の二人暮らしである。無理せず、気持ちよく食べきるためにも、作りやすく食べやすいおせちがちょうどいい。

 しかし、その分、お正月用のお酒はいっぱい買ってある。福の神様には、この三が日、とっておきの純米酒やにごり酒をメインに飲んで頂き、我が家のお気軽おせちは、おつまみ程度に楽しんで頂ければ幸いである。



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