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干し芋は風の味
干し芋は風の味がする。
自分で作るようになって、私は初めてそのことを知った。
昨年末のこと。
近所の野菜販売所で、サツマイモを売っていたので買ってみた。
そのままふかして食べようか。いや、ちょっと気合を入れてスイートポテトにしようか。そんなことを考えていたとき、ふと、あのぺらりとした素朴な干し芋の姿が頭に浮かんだ。
これまでも、何度か干し芋を作ってみようと思ったことはあるが、面倒な気がしてやらずじまいだった。今になってみれば、何故あんなに面倒に思っていたのか不思議なくらい、私は今、干し芋を作り続けている。
サツマイモをふかして、
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皮をむいて、
![](https://assets.st-note.com/img/1674452817642-JTU0XlrIDE.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1674452848914-yJzP0Dtjvb.jpg?width=800)
切って、干し網に並べる。
![](https://assets.st-note.com/img/1674452965822-qdgtuJSmAb.jpg)
このシンプルな工程で、自家製のおやつができるなんて、考えてみれば驚きだ。
ネットで検索してみると、サツマイモをふかすのに炊飯器を使っている方が多くいらした。
私は普段は、母が使いこなせなかった、おさがりの電気圧力鍋を使ってサツマイモをふかしている。正直、電気を使う調理器具は、2011年の震災以降、あまり使わないようにしていたのだが、一度使い始めると、やはり便利なので頼りにしてしまう。もしかしたら、干し芋作りのハードルを下げてくれたのは、この電気圧力鍋かもしれない。
干し芋と言えば、縦長のフォルムが一般的だが、私は輪切りにすることが多い。その方が切りやすいし、早く干し上がる。干し芋特有の、繊維に沿ってちぎることはできなくなるが、私は早く食べたいのだ。
そんな、我慢のきかない性格が災いして、干し上がる頃には、網に乗っているサツマイモの量が、三分の一ほど減っている。干し具合を確認する度にひとつ、つまんでしまうからだ。
触ればわかるはずなのに、触った指で、サツマイモをつまみ、そのまま口に運んでしまう。こういうとき、
私ってダメだな。
と本当に思う。そう思っても、つまみ食いがやめられないのだから、我ながら困ったものだ。
寸前まで、風にさらされていた干し芋を口にすると、芋の風味だけではない、乾いた味わいが口に広がる。その味は、先程まで鼻をかすめていた風の匂いと同じだ。その風の味に、私はうっとり目を瞑る。
やはり、つまみ食いはやめられない。
良い塩梅にできあがった干し芋を見て、夫が言う。
「あれ? こんなに量少なかったっけ?」
痛いところを突かれ、私は内心うろたえながらも、首をかしげる。
「いやぁ、干すと結構縮むものなんだねぇ」
そんな大嘘を叩いた口で、私はまた干し芋をかじる。
にゅっにゅっ。
歯にまとわりつく食感がいい。
寒い冬の干し芋は、あたたかいお茶にとてもよく合う。
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お読み頂き、本当に有難うございました!