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[コラム 3] 人工知能について考える

 人工知能。今やはるか昔の話題のような気もするが、コロナ禍で見直してみたい。
 先ず復習から。

グーグルが、囲碁ソフト『アルファ碁』を開発したディープマインド社を買収するきっかけは、シェーン・レッグ氏が書いた一つの論文からだった。極初歩的なテレビゲームを、うまくできれば「褒め」、逆に失敗したら「ダメじゃないか」と叱る。たったそれだけのことでゲームソフト(人工知能)自身が、どこがよくてどこが悪かったのかを「強化学習」する。すなわち一生懸命勉強したわけだ。人間にしたら「超お宅」と言ったところ。

その結果、人間の名人にも勝てるようになった、という論文がグーグルの最高経営責任者ラリー・ペイジ氏の目にとまり、最終的にディープマインド社を買収することになったそうだ。

このとき、ラリー・ペイジ氏は、「ある種の人間性の萌芽を思わせる人工知能(ゲームソフト)の登場であった」、と感想を漏らしている。
 シェーン・レッグ氏がゲームソフトに問いかけたことは、まさに子供を育て教育するときの、「子褒(こほ)め」と「叱(しか)りと躾(しつけ)」に似ている。

「ディープラーニング(深層学習)」と「ディープ・ニューラル・ネットワーク(類似の脳神経ネットワーク)」は人間性の萌芽を示した最新の技術であった。

ディープマインド社の共同創業者の一人、デミス・ハッサビス氏は人間の脳の海馬を研究し、海馬が記憶とそれに基づく未来を予想する橋渡しの役目をしていると発表した。

この研究成果は、2007年に世界的な科学論文誌「サイエンス」における「今年最大のブレークスルー」賞に選ばれた。

 ハッサビス氏はこの海馬の研究成果を生かして、「過去の経験から何かを学び、それを未来の行動に生かすニューラルネット」を開発した。このように人間の脳を手本とした人工知能だから、「褒められる」と無限に上達するのである。

 しかし、それが逆の教育をしたとしたら、おぞましい結果を招くことにもなりかねない。だからだろうか、ディープマインド社はこのことに深い危惧の念をいだいており、開発者自(みずか)らがその恐怖に慄(おのの)いているのである。

 そして、2045年にシンギュラリティ(人工知能が人間の能力を超える転換点)が起きると言われていたが、あと20年と少し。その前に2030年が脱二酸化炭素社会に至れるのか、人類は大きな岐路に立つ。その答えを求めるのに、開発途中の人工知能は役に立たないのだろうか。

 人工知能にとっても一つの岐路に立たされているのではないだろうか。
 人工知能がんばれ! と、言っていいのだろうか。まったく、悩ましいところだ。
                    つづく

【コラム4 消えていく職業について考える】予告
 人工知能の誕生により職業は消えていくとうわさされるが、それは本当だろうか。 

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