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童話小説「ガルフの金魚日記18」

 冬さんがプリプリした顔でやってきました。
「ガルフ、どう思う春のこと」
「春さんをどう思う、といわれましてもねぇ、金魚のぷくには、なんとも」ぷく。

「春は、夏をしかれというし、秋は泣いて部屋から出てこないし、みんなぼくのせいだって。もっと真剣に子育てに参加してって、いうんだよ。まるでぼくがなんにもしていないみたいじゃないか。いいかげんにしてほしいよな」

「そうだったんですか、それは大変ですね」ぷく。
「それで困っているんだ。なんか名案はないかな」
「名案といわれましてもねぇ」ぷくぷく。
「そんな冷たいこといわずに教えてくれよ。ぼくとオマエの仲じゃないか。たのむよ、どうしたらいいと思う」
 ウーム、どうしたらいいのでしょうねぇ、ぷく。

「そうだ! こうしたらどうでしょう。冬さんが春さんに、だまってあやまるんです。それで、夏くんを叱って、秋ちゃんには…」
「そんなの、ぜんたい、いやだ!」
 まだ話の途中だったのに…。ぷくの考えは無視されてしまいました。ぶくぷく。

「ぼくは、夏や秋、子供たちをしかりたくないんだ。同じ仲間でいたいんだよ。だからしからない。それに…」
「それに、どうしたんですか」ぷく。
「それにだよ、おこったら、子供たちにきらわれちゃうじゃないか。そんな役目はごめんだね」

「それは春さんだって、同じでしょう」
「だから、女はずるいんだよ。男女平等の世の中じゃないか。しかるのは男なんて不公平だ。春さんが、子供たちをしかればいいんだよ。そのあとを、ぼくがなぐさめる。そうすれば子供たちは、みんなぼくのこと、好きになるでしょう。ふふふ」

 どっちがずるいのでしょうかね…。ぷくにはわかりませんが、おとうさんとおかあさんの役目が、同じでいいのでしょうか。ぷくにはわかりません。ぷくー。

「ねぇ、冬さん。秋ちゃんのことですけど」
「秋が泣いて、部屋か出てこないそうだけど、どうしたんだろう」
「秋ちゃんはですね。冬さんには、ちょっといいにくいのですが…」ぷくぷく。
 だまっていようと思いました。

「おい、ガルフ。だまってちゃあ、気になるじゃないか。はなしてくれよ」
「そうですか。ぷくから聞いたなんて、いわないでくださいよ。たぶんですけど、失恋をしたんじゃないかと」ぷくぷく。

「えっ、失恋したって! どこのどいつだ。秋を、アキを…。よくも、よくも…。そ、そいつを、ぶんなぐってやる!」
「いけません、暴力は。かえって秋ちゃんを傷つけます。冬さん、そんなことしたら、二度と口をきいてくれませんよ」

「それはこまる。それじゃあ、どうすればいいんだよ…」
 冬さんは頭をかかえ、途方にくれてしまいました。ぷくぷーく。

     明日の金魚日記へつづく

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