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Diary 2023/10/07 吉田美奈子さんのこと

毎年この時期、個人的にとても大事なミッションが発生します。
それは、毎年クリスマス時期に開催される、吉田美奈子さんのライブのチケット取り。
最近、あちらこちらでライブされていますが、以前はクリスマスライブしかやっていなかった時期もあり、とにかくそれを逃したら吉田さんの歌が聞けないって事で、毎年臨戦態勢でチケット取っていました。

吉田美奈子って誰?という方も多いと思います。
山下達郎さんやYMO、大瀧詠一(敬称略)など、多くの有名なアーティストとも活動を共にしていた方で、いろんな人に曲も提供しています。
とにかく凄まじい声量、素晴らしい歌声、とてつもない表現力で、他の追随を許さないシンガーです。
長くCDも出しておらず、歌を聞くにはライブに行くしかない。
私、音楽にはほとんど興味なく、B‘zとEXILEの区別すらついてなかったくらい疎いんですが(友達に「そもそも人数が違う」と言われた)、吉田美奈子さんは長い間ライブに通い続けています。

吉田さんの歌を始めて聞いたのは、当時好きだったアーティストのラジオでした。
聞いたのは「Christmas tree」。
炬燵の中で聞いていて、あまりの衝撃に立ち上がり、しばし呆然としていた事を覚えています。
もう一度聞きたくて一生懸命CDを探しましたが、その時はすでに音源となるものは入手できない状態でした。
その後しばらくして、私は会社で悪意ある人達の卑劣な策略に巻き込まれ、命危ぶまれる事態となりました。
一週間記憶喪失、失語症、「みんなが私を殺そうとしている」と震えて家に帰った後、一歩も外に出られなくなりました。耳の奥で「お前なんか死んだほうがいい」「死んだほうが楽になるよ」「ほら、電車が来るからここから飛び降りなよ」という声が聞こえました。
重度のパニック障害になり、乗り物にはいっさい乗れなくなり、何かあればひどい発作が起きるようになりました。
怒りと悲しみ、そして絶望しかありませんでした。
ひどい幻聴もあり、発作的に自死をしかけた瞬間も何度かあります。
ぎりぎりの所で踏みとどまっていました。

そんな時、すべての事情を知る親しい元同僚から電話がありました。
「吉田美奈子さんがクリスマスにライブをやるよ。あなたの好きなあの曲もきっと歌うはず。付き添ってあげるから、いっしょに行きましょう」
電車にもバスにも乗れず、ライブ会場なんてとんでもない、絶対にひどい発作が起きます。
でも当時、滅多にライブをやらない美奈子さんの久しぶりのライブでした。
それを逃したら私は二度と、「Christmas tree」を聞く事ができないかもしれない。
そう思って参加を決意。
ひどい発作で壮絶な気持ち悪さと激しく震える私の手を、元同僚が「大丈夫、大丈夫」と言いながら握っていました。
そして私は、ずっとずっと聞きたかった「Christmas tree」を生の吉田美奈子さんの声で聴きました。
素晴らしかったです。
今もその時の事は覚えています。一生忘れる事はないでしょう。
涙を流しながら固まっていた私に、歌が終わった後、元同僚が小さな声で言いました。
「がんばって生きて。そして美奈子さんのライブにまた来よう」

それからずっと可能な限り、吉田美奈子さんのライブに通い続けています。
「Christmas tree」は、実はあまり歌われる事がない歌で、その後、聞いたのは五本の指にも足りません。
ああ、あの時聞けたのは奇跡みたいなものだったのだな、とちょっとだけ思いました。
音源はその後、CDで入手する事が出来ました。
今も聞くと、あの時の気持ちが蘇ります。
吉田美奈子さんのライブに行く事は、私にとって”生きている証し”です。
死にかけていた私が聞いた吉田美奈子さんの歌は、真っ暗闇だった私の心に灯りをともしました。
その灯りは今も、私の心の中のクリスマスツリーのてっぺんで、きらきらと輝いています。
吉田さんご本人に伝える事は叶わないと思うけれど、心からの感謝の気持ちを抱きながら、毎回ライブ会場のはしっこでその歌声を聞いています。

追記
あろうことか、曲のタイトルを間違えておりました。
それをよもやご本人からご指摘いただいてしまうという。。。本当にごめんなさい。
ずっと抱いていた感謝の気持ち、そんな形でご本人のもとに届いてしまったのは痛恨の極み、不徳のいたすところです。


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