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第29話 趣味の合う友情と死をみつめる心

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養護学校高等部から漫画の貸し借りをしていた同級生がいました。その子をフジセと言います。癲癇(てんかん)の病気で、かなり重度でした。

フジセとは漫画の趣味が合い、部屋には面白くて濃い内容の漫画がそろっていました。

重度の癲癇なので、動作が鈍くゆっくりな彼女。階段は人の何倍も時間がかかります。音楽室は別棟の3階にあり、とてもゆっくり登ってきて、頑張っていました。
「フジセ!大丈夫?」
「大丈夫ーー!」
としっかり答えてくれていました。別棟にはエレベーターが無いのです。

フジセの部屋は隣の病棟にあり、たまに私は押しかけて面白い漫画を貸してもらっていました。

卒業後は年賀状のやり取りや、メールをしていました。卒業後にフジセと連絡をとってたのは私しかいなかったようでした。思いつきで私は、妹におんぶしてもらって笑ってる写真を、フジセの自宅に送りました。とても喜んでくれて良かったです。

1000平方メートルのネモフィラ
福岡県の海の中道海浜公園にて。

年末が近づいてきた時、フジセの姉が亡くなったという喪中はがきが届きました。確か同じ癲癇だったはず。え?フジセ大丈夫なの?

フジセは、メールで施設に入るかもしれないと言っていました。それから施設に入ったからか、メールに返信が来なくなったのです。元から長いメールは来なかったのですが、施設では面会が出来るのか聞きたかったのですが。

それからは年賀状を送ると、フジセの文字は無い年賀状が届くようになりました。複雑な気持ちです。

施設へ入所したらしき年から数年後のことです。フジセが亡くなったという喪中はがきが届きました。
言葉が出てこなかったです。

姉が同じ病気で先に亡くなっていて、フジセは死を身近に感じて死を見つめていたのでしょうか?
ご両親は子供を2人とも見送る事になり、どれだけ悲しいでしょう。

親より先に死んじゃいけないと、コロニーで見て思って頑張っている私には、何とも辛い事実です。

彼女の声と笑顔がずっと胸にあります。

闘病は辛かったかもしれない。メールも出来なかったし。苦しくなかっただろうか?胸が苦しい。

「華ちゃん、これ面白かったよ!」
「大丈夫ーー!」
「華ちゃんだけだよ、連絡くれるの(笑)」

フジセの声がよみがえります。

フジセ、お疲れ様。
もっと同じ世界にいられると思ってたけど、私も頑張りきってから、そちらに逝くよ。
ちょっと待ってて。
また笑って会話しようね!



大切に生ききったはず。
今は、お姉さんと一緒だね。
またいつか!

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