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認知症予防は“薬”でなく“運動靴”

◆年中無休の臓器

クイズです。
寝ている時も働いてる臓器は、どれでしょう。

①脳  ②心臓  ③胃

正解は、①と②です。

心臓が夜中も働いていることは、容易に理解できますが、
脳も夜に休んでないとは驚きです。
しかし、心臓とは少し様子が異なります。

従来、「ボーッとしている」ときは、脳はさほど働いてないと思われていました。
しかし、ボーッとしている時ほど、活発に働いてる部分が脳にあったのです。
しかも、それは、認知症と深い関係があることが分かってきたのです。
脳は、24時間365日、年中無休でフル活動をしているのです。

ちなみに、胃は、睡眠中は休んでいます。

◆どんな運動が効果的?

クイズです。
認知症を予防する運動はどれでしょう。

①ウォーキング  ②ストレッチ  ③筋トレ

正解は①のウォーキングです。

アメリカのベックマン研究所のクレーマー教授の研究が驚きです。
高齢者に一年間、さまざまな運動を体験してもらい、
脳内ネットワークを調べました。

結果、一年間、歩行を続けたお年寄りは、
脳が80歳の老人から、23歳の若者の状態になりました。

通常、脳内ネットワークは、歳とともに低下しますが、
「歩行」により、改善したのです。

ストレッチや筋トレを行ったグループでは、その効果はありませんでした。
(注:脳内ネットワークの改善がなかったということであり、ストレッチや筋トレが無意味ということではありません)

脳内ネットワークを若返らせたウォーキングとは、
どんなものだったのでしょうか。

◆1日1時間、週3回

クレーマー教授が答えた運動量は、意外にも少なかったのです。
「1日1時間程度のウォーキングを週3回。それを1年間継続しただけです。
 ただし、息が少し上がる程度の早歩きです。」

ウォーキングは有酸素運動ですが、
ストレッチや筋トレは有酸素運動ではありません。
脳内ネットワークの改善には、有酸素運動が良いと考えられています。

◆早歩きは海馬を大きくする

早歩きの効果は、脳内ネットワークの改善だけではありません。
萎縮していく脳を大きくする効果もあります。

アルツハイマー型認知症では、記憶をつかさどる海馬が萎縮します。
歩くことで海馬を大きくすることができることが明らかにされています。
高齢者は、通常年1~2%の割合で、海馬が萎縮していきます。
アルツハイマー型認知症では、通常の老化よりも速いスピードで、萎縮します。

1年間運動すると、海馬の時計を逆戻りさせ、
2%大きくすることができました。

長い間、高齢者の脳は老いていくだけと思われていましたが、
若返らせることができるのです。

海馬を大きくする薬は、現在まで開発されていません。
認知症予防に必要なのは、「薬」ではなく「運動靴」と言えるでしょう。

参考文献
1)青柳由則:『認知症は早期発見で予防できる』, 文藝春秋,2016

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