レバニラ炒めと酒乱女

悲しくて身体中痛くて、深夜に台所で泥酔していた。

そこに一通のメール。

A「今日もおいしいレバニラ炒めとワンタンスープと豆ご飯頂いてしまってありがとうございました。花さん家にいると本当に楽しいです。レバニラ炒め花さんの分まで食べてしまってすみません。」

心がささくれだっていた私は、とっさに冷ややかな返事をした。

花「お疲れ様でした。食事はついでですから、お気になさらないで下さい。」

A「今日はOくんと3人で歌を歌ったりして、本当の親子みたいで倖せでした。これが本当だったらどんなにいいか、、」

酒乱魂に火がついた。

花「そりゃ楽しいでしょうよ。こっちが気を遣っているのがわからない?ってわかってても気づかないフリしてんだよね」

A「気を遣ってくれてるの、分かります。私って、つい調子にのるから、、花さんに負担をかけてしまって、、」

花「あーうぜー!そういうこと言うと思った」

A「うざいのかあ、、、なんだろう?」

花「とぼけてんじゃねーよ。私はさんざん『それは不愉快です』って表してんのに。やべ、ヒートアップしてきた。おやすみ」

A「不愉快な気持ちさせてしまい、ホントにごめんなさい。」

花「本当に男ってみんな同じリアクションするよね。次は『今度会った時に話し合おう』って言うよね。」(何に誰に怒っているのか分からなくなっている)

花「その次は『これからは俺が守る』って言うよね」(妄想の域に入ってる)

A「言おうと思ったけど先を越されたので言いません。確かに『俺が守る』って云ったかな。でも私の感じた事や思ったことしか云ってないし、やってない。だって、私の人生だから。そして自分のことだけでなく花さんの事もOくんの事も考えてる。」

花「ありがとう。おやすみなさい」(もう読んでいない)

A「おやすみなさい。自分の人生を大事にしたいし、好きなひとも大事にしたいです。」


翌朝

A「おはようございます。今日も秋晴れかな。私もしっかり、お仕事行ってきます。今日も平和な穏やかないちにちに、しましょう。」「ごめんねー」

私は、なんかやらかしちゃった記憶はあり、昨夜のメールを読み返して青ざめた。数時間おいて返信した。

花「おはようございます。昨日はごめんなさい。」返信なし。夕方「昨日は本当にごめんなさい。もう遅いかも知れないけど。」もう一度送信。

A「こんにちは。花さんはそういう所も含め、可愛いと思います。無邪気さも果てしない優しさと愛と、、哀しみもたおやかさも秘めた美しい女性です。花さんの分のレバニラ食べてしまってごめんなさい。今度、食べに行きましょう。しょうが焼きとか麻婆豆腐とか、肉野菜炒めとかぎょうざとか、ね。」

花「ありがとう。本当に優しいですね。そして度量が広い。レバニラ炒めのことで恨んでません。外に食べに行くのはいいかも。」

その後、子どもの事で色々相談した。元々Aさんは子どもの支援団体の担当者だ。Aさんはもっと支援を入れるべきだというが、なかなか引き受けてくれる事業所がない。だから私はAさんを含め、理解して下さる方々の厚意で生活を回している。金銭の発生しないボランティアというのは危うい。無料でお願いするのは気がひけるので、金銭が発生するようにあちこちに頼んでいるのだが、断られている。

A「なんであそこの事業所は引き受けてくれないんだろう?なんだか花さんに意地悪してるように見える。」

花「男性が責任者の所は、すぐ話を理解してとんとん拍子で進めてくれるんだけど、女性だとほとんど潰される。多分私の何かが勘に障るんだと思う。私は男社会で意見を言ってきたから、意見を言わなかった女の気持ちがわからないけど。」

A「なんでだろ?女性って、なんか嫉妬とか優位性とか派閥とかでジャッジするとこあるからね。特にあそこの管理者は、可愛らしい女性とか綺麗で頭が良い女性を嫌うような感じだよね。花さんは壇蜜みたいなとこあるから、もてない知恵ない頭悪い女性から嫌われるのかも。」

花「壇蜜!!全然違うけど、壇蜜好きだから嬉しいな。」

A「花さんは壇蜜に似てるよ。ラジオ聴いてて似てるなあと思ったよ。思考とか優しいとことか、容姿も似てる。ほら、壇蜜みたいな人って、ある種の女性から嫌われてるでしょ?」

花「似てないけど!壇蜜は思考とか知性とかひっくるめて好きだよ。」

A「壇蜜って、不思議ちゃんみたいなイメージあるけど、同じ不思議ちゃんでも、ゆうこりんみたいに作ってないとこがいいよ。ナチュラル。凄く知性的だし感情を抑えつつゆっくりと出して風車みたいに回すとこが花さんと似てる。」

花「へー。壇蜜のラジオ面白いんだ。radikoで聴いてるの?」

A「radikoで聴いてる。エロいとこも、花さんに似てるかな」

花「エロい!?私ってエロい?そんなこと言われたことないよ!どっちかっていうと『色気ないなー!』って言われるタイプだったよ」

A「花さんは自分ではそのつもりがなくてもエロいとこが、モテない女性などから嫌われる要因だよ。」

花「特定の女性から忌み嫌われることは自覚してたよ。いつもオドオド人の顔色伺っているからだと思ってた。まさかエロいとは思わなかった。それは難しい」

A「エロいよー。Oくんも花さんのこと、たまに女性として意識してる感があるかも」

花「お、Oも!?それはかなり受け入れがたい。おやすみなさい。」

A「おやすみなさい。明日もハレルヤかな」



断っておくが、私は一歳も若見えしない、野暮ったい中年女だ。サザエさんでいえばフネだ。

凄絶な人生を送ってきたので、男性不信だし、恋愛もできない。自分はお婆さんだと思ってズボラに生きてきた。

ノーブラ、ノーメイク、いつもスェット。

Aさんによると、そのズボラさがまた欲情をそそるという。

何という皮肉。

自己認識がガラガラと音を立てて崩れた。







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