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美しさで優位性を築く「国家戦略としての芸術」

「芸術支援は最優先事項」

ドイツのメルケル首相が5月9日に行った演説では、「連邦政府は芸術支援を優先順位リストの一番上に置いている」とし、文化を重視する姿勢が強調されました。

導⼊
 ドイツは⽂化の国であり、私たちは全国に広がる多彩な催し物(展⽰や公演)に誇りを もっています。ミュージアム、劇場、オペラハウス、⽂芸クラブ、そのほかにもたくさんあります。⽂化的供給が表現しているのは、私たちについてであったり、私たちのアイデンティティについてだったりします。コロナウイルスによるパンデミックは、私たちが共に営む⽂化的⽣活の深い中断を意味します。とくに影響を受けているのは多くのアーティストたちですが、いっそう深刻なのはフリーランスのアーティストたちです。現在の状況は不確かなままです。だからこそ私たち連邦政府、なかでも連邦⽂化⼤⾂モニカ・グリュッタースは、各州とともに関⼼を寄せていることがあります。私たちの⽂化的⽣活が将来にもチャンスがあり、そしてアーティストたちに橋が築かれることです。
質問:コロナ時代に⽂化はどのような役割を果たすのでしょうか?
 ⽂化的イベントは、私たちの⽣活にとってこのうえなく重要なものです。それはコロナ・ パンデミックの時代でも同じです。もしかすると私たちは、こうした時代になってやっと、⾃分たちから失われたものの⼤切さに気づくようになるのかもしれません。なぜなら、 アーティストと観客との相互作⽤のなかで、⾃分⾃⾝の⼈⽣に⽬を向けるというまったく新しい視点が⽣まれるからです。
 私たちは様々な⼼の動きと向き合うようになり、自ら感情や新しい考えを育み、また興味深い論争や議論を始める⼼構えをします。私たちは(芸術⽂化によって)過去をよりよく理解し、またまったく新しい眼差しで未来へ⽬を向けることもできるのです。これらすべては、もちろんコロナ時代においては制限された範囲でのみ可能です。これは、アーティストに当てはまることですが、もちろん観客にも当てはまります。

文化のない国は尊敬されない?

彼女本人がこの演説内容を記したのかはわかりませんが、芸術の本質を理解していることが伝わりましたし、知性や母性を感じる内容でした。

この演説を聞いて、ふと東京画廊 山本豊津さんの著書「アートは資本主義の行方を予言する」で記していた「国力の象徴としての文化と芸術」を思い出します。

"芸術は時に武力や権力によりも人を動かすという話をしましたが、これは決してきれいごとでも空論でもありません。じつは国家自体もこの真理をよく知っているのです"

第二次世界大戦後、世界最大の軍事力や経済力を持ったアメリカが必死に求めたもの、それは「文化、芸術」における覇権です。それは、当時新しい国であったアメリカには欠けていたものでした。

アメリカは、1935年から1943年にかけて、連邦美術計画と呼ばれる芸術家支援計画を積極的に進め、5千人から1万人もの芸術家が20万点もの作品を制作しました。その作品は、全米の公共施設や学校、病院やビルの壁画を飾ることになり、そのムーブメントからジャクソン・ポロックなどの著名アーティストが生まれました。そこから、ネオ・ダダやポップアートの動きが生まれ、一世を風靡することになります。

歴史的にみてもギリシャ文化やローマ文化、中国文化のように覇権を取った国の文化が周囲に影響を及ぼし、さらなる統治と支配を実現してきました。
その背景からも、権力だけでの統治だけでなく、芸術の分野でもヨーロッパに追いつきたいと考えるのは言いえて妙です。

いくら力があっても、文化に劣っている国は他国から尊敬されないという前提があったのかもしれません。

美しさを大切にする力

「美しさを創り出し、保つ力」が、これからの国だけではなく、私たち個人にも不可欠なのだと思います。
それが、その人の生きざまに繋がりますし、何より圧倒的に美しいものや品格が高いものに対して、周囲は勝ち負かそうだなんて思いづらいはずです。むしろ、リスペクトや憧れの気持ちになるのではないでしょうか。

勝ち負けの世界から一線を画す「美しさの世界」。
それをいかに体現できるかが、国家・人としての器なのだと思います。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!

【参考】「アートは資本主義の行方を予言する」山本豊津



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