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津波アラートで思う、あの日と今日

動悸がした。

運転中に、突然ワンセグの音声がはじまって、私は驚いた。
何も操作していないのに。
「津波が来ます。高台に避難してください」
津波?地震は来ていないけれど…と聞き耳を立てていると、どうやら沖縄の話らしい。
地震や津波警報が発表されると、自動でワンセグに切り替わるようになっているようだった。

「津波!避難!」
「つなみ!にげて!」
「EVACUATE!」
黒い背景に黄色の文字で危険を伝えるテロップが忙しなく切り替わる。

胸がザワザワした、あの日を思い出した。


2024年1月1日、私は実家のある石川県に帰省していた。
初詣に行き、こたつに入りおせちを食べる。
何にも変わらない、いつものお正月だった。

16時すぎ、大きく揺れた。
2回目は震度5強だった。

緊急地震アラート。
震源地は能登。
テレビをつけると、海の映像に「津波!逃げて!」のテロップ。
アナウンサーが「津波が来ます!」と叫んでいた。

実家は海から割と近いところに位置する。
本当に津波は来るのか、半信半疑だったがテレビニュースの物々しさに気圧されて、ソファにあった毛布と玄関にあった2Lの麦茶をつかんで車に飛び乗った。
子どもと弟と母と5人で車で逃げた。

逃げる途中、回転寿司屋さんの横を通ったが、今から寿司を食べようと入店する人もいるくらい、当時そこにいた人たちは実感がなかったし、どうすればいいのかもわからなかった。

とりあえず、避難所へ向かった。地元の中学校だ。
到着して、ケア帽子のまま飛び出してきたことに気がついた。
避難所は寒かった。


私は1ヶ月前に抗がん剤治療を終えたばかりだったけれど、能登には治療中の人も、手術を控えていた人もいただろう。

今回の地震だけではない。
東日本大震災、阪神淡路大震災などでもそうだ。
手術を来月に控えた人、抗がん剤治療中の人、経過観察中の人。
手術が延期になったり、抗がん剤治療ができなくなったり、検査ができなくてその間に再発転移し発見が遅れたりもしただろう。

そう思うと、生かされているのは、今生きているのは、きっと運でしかない。
生きるも死ぬも、もう自分の手を離れたところにある。
考えても、どうしようもない。

だから、深呼吸して、今生きていることに感謝しながら、毎日を噛み締めて生きよう。



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