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檸檬  れもん  レモン    大阪府

こんにちは。

昨日に続き、文学碑のメモを。


レモンスカッシュやレモンサイダーなど、「檸檬」と聞くと爽やかなイメージを持ちますが、梶井基次郎先生の名著「檸檬」は独特な読後感です。暗澹たる感情が沸き立ち、最後も不気味に終わります。しかし、不思議な読書体験が故に、何度も味わってしまうのです。檸檬のように。


大阪にて、梶井基次郎先生の文学碑を訪れました。靭公園内「うつぼこうえん」にある文学碑。夜でしたので、探すのに少し苦労しました。

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びいどろと云う色硝子で鯛や花を打出してあるおはじきが好きになったし、南京玉が好きになった。またそれを嘗めて見るのが私にとつて何ともいへない享樂だったのだ。あのびいどろの味程幽かな凉しい味があるものか

梶井基次郎「檸檬」より


なぜこの部分を文学碑として残されたのだろうか、と深慮しました。しかし、回答は導くことはできませんでした。

個人的には、後半部分の、

見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかえっていた。私は埃ほこりっぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。私はしばらくそれを眺めていた。

の辺りが、好きなんですよねえ。「檸檬」と云う文字も入ってますし・・・。まあ、個人的な見解ですけれど。

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梶井 基次郎
明治34年(1901年)、大阪市西区に生まれる。
短い自らの生命の輝きを洗練された詩的な文章で
「檸檬」以下の珠玉の短編に書き残した。
大阪市


「檸檬」は著作権が切れていますので、青空文庫やiBooks等にて無料で読むことが出来ます。短編ですので隙間時間で読めますが、何度も何度も読み返しますと、檸檬を舐めているような感覚になります。おすすめの一冊です。



花子出版     倉岡



文豪方の残された名著を汚さぬよう精進します。