Hanabi

如月花火

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如月花火

最近の記事

無題

 あの人は許されるのに、私だと許されない事だとか、つまりは稚拙な嫉妬の積み重ね。他人の脳内を覗けるから、私は音楽を聴いている。本を読んでいる。それ以上の理由なんてない。ずっと自分がわからなかった。もっと気楽に人生を歩めたら良い、と思う。思考ばかりしているせいで夜は眠れず、朝日が昇ってきたタイミングで眠りにつくと脳が疲れているからか毎回10時間以上の睡眠をとってしまう。昔から身体が弱くて、度々体調を崩すから母親からは将来の心配をされる。ぼくがいちばん、心配に決まっているのに。そ

    • 決して醒めぬ夢とやらを

       冷蔵庫の中では肉が腐っている。偏食な彼女が好きだと言った食べ物をメモしては買い溜めていた。きみがぼくの家に来るようになってからあまり野菜を摂らなくなってぼくらはどんどん不健康になっていったね。唯一のお揃い、きみとぼくのからだ。帰ってきたら大好物の牛タンを焼いてやろうと思っていた、思っていたのにさ。いまこの瞬間、玄関のチャイムが鳴ったなら、ぼくは少しだけドア越しに小言を投げた後に鍵を開けて息も出来ないくらいに抱き締めてやるよ。あーあ、僕は別に肉なんて好きじゃないこと知ってんだ

      • 虚像は愛

         友人に連れられて初めて入ったパチ屋で8000円勝って、簡単に絶望した。友人は「ヤバいこれアツい!」と隣でずっと興奮しながらビデオを回していて、その様子を見て私も少し胸が躍ったが簡易的に造られた熱は一瞬で冷めてしまう。  刺激が足りない、刺激が足りないと思って偶に気が向いたらギャンブルをするのだが、結局勝ってしまってなんだよクソ、つまんねえなと心の中で吐き捨てて飽きてそれから手はつけていない。詰まるところ私はお手軽な絶望を欲しているだけなのだ。金なんてどうでも良かった。無駄に

        • 耳の穴の行方は

           この人にピアスを開けてもらいたいって、相当な愛情だと思います。私は貴方に初めてを奪われたかった。処女喪失みたいなものですかね。  きみといた夏に、ピアスをあけて欲しいと頼んだら「夏だと膿んじゃうから冬の方がいいよ」と言われて、簡単に絶望しました。だって貴方と冬まで居られるわけがなかったから。ひと夏の恋、なんてチープな言葉だけど本当にそうだった。私は、確信してたの。 「きみがおれを捨てなければ、居られると思うけど」  そうやって真剣な眼差しで言う貴方が気持ち悪かった。1ミリも

          告白

           10代で死ぬと思ってた。10代で何かを成し遂げて才能の急逝を惜しまれたかった。  演劇を辞めた。殺したいくらい好きだった男の事を思い出す回数は減ったのに、舞台に立つ事にはどうしようもないくらい恋焦がれていた。その事実に陶酔する。何かに依存していられないと生きていられないね。  演劇を辞めた。あの日、僕は自殺した。舞台で他者を演じる事で得られる賞賛、ぼくを評価しているようで仮のぼくばかりが褒め称えられる。あの気持ち悪さが心地よかった。満たされていた。  でもね僕は、一度死んだ

          大人ぶるなよ

           猫を抱く時みたいに、君へのメッセージを考えている 力加減が解らないんだよ、少し強く抱き締めたらきみの臓器が変になっちゃわないかなとかさ、馬鹿なこと考えちゃうんだ。まあ君の身体が私の腕の形に変形したらそれはそれでいいんじゃないかとか、どうしようもない程に愛してしまうと自分の行動を客観視できなくなってしまって。それでだめになってきたこと何回もあるでしょう、思い出しなよ。忘れられるわけないよね? あのひとのゴミを見るみたいな表情さあ。ね、覚えてるんでしょ。覚えてないフリしちゃって

          大人ぶるなよ

          神様

          「貴方のことをどうでもいいと思えてしまう日が来たとしたなら、その日はぼくの命日です。そんな陳腐な感性を患った自分と、生きていきたくなんかないから」  ぼくはきみになれない  そのカリスマ性 吐き気がします 「でもきみもぼくにはなれないでしょう」なんてありふれたやり取りに、きみはきっとクソほど興味がない そんな君に安心する  愛している。  もっと壊してくれよ ぼくの価値観  壊されることでしか保てない自我を、孤独なフリして何処迄も他人に寄りかかることでしか生きていられな

          君は夏に死んだ

           もしいま、君が僕の目の前に現れたら、ぼくはどうするんだろう。なにも言わずに強く抱きしめてしまうかもしれない、そのまま私の綺麗な手を君の首に伸ばして絞め殺してしまうかもしれない、でもどうせなら最期にきみの血が見たいな、自分の血も見てみたい、生きた証をこの目に刻んでしまいたい。都会を一望できるあの高い、他界建物から手を繋いで堕ちることが出来たら私の中の何か報われるのだろうか。君とだったらお腹の中に命を宿してもいいなと簡単に思ってしまって、思っていただけだった筈なのに、いつもなら

          君は夏に死んだ