見出し画像

君は夏に死んだ

 もしいま、君が僕の目の前に現れたら、ぼくはどうするんだろう。なにも言わずに強く抱きしめてしまうかもしれない、そのまま私の綺麗な手を君の首に伸ばして絞め殺してしまうかもしれない、でもどうせなら最期にきみの血が見たいな、自分の血も見てみたい、生きた証をこの目に刻んでしまいたい。都会を一望できるあの高い、他界建物から手を繋いで堕ちることが出来たら私の中の何か報われるのだろうか。君とだったらお腹の中に命を宿してもいいなと簡単に思ってしまって、思っていただけだった筈なのに、いつもならそんな事絶対に口にしないのに、あの日はつい零れてしまった。案の定怪訝な顔をぼくに向けたきみはそれですら美しくて更に惹かれてしまってどうしようもなかった。どうしようもできない程に好きだと思わせてくれてありがとう、どれだけきみが、わたしが最低でも、あの刹那的な恋情は最高に気持ちが良かった。きみの瞳で殺してほしかったな、いっときの感情の昂りで死にたかった。だってこんな夜に月さえ見ないぼくだから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?