耳の穴の行方は

 この人に初めてのピアスを開けてもらいたいって、相当な愛情だと思います。私は貴方に初めてを奪われたかった。

 きみといた夏に、ピアスをあけて欲しいと頼んだら「夏だと膿んじゃうから冬の方がいいよ」と言われて、簡単に絶望しました。だって貴方と冬まで居られるわけがなかったから。ひと夏の恋、なんてチープな言葉だけど本当にそうだった。私は、確信してたの。


「きみがおれを捨てなければ、居られると思うけど」


 そうやって真剣な眼差しで言う貴方が気持ち悪かった。1ミリも嬉しくならなかった自分と、冷めていった。でもそうだね、結局捨てたのはぼくのほうだったのかもしれない。結果論でしかないけれど。

 今はね、本当に好きな女の子と恋人にひとつずつあけてもらおうと思っているんだ。

 本当は、本当は、本当は本当は本当は本当にきみにあけてほしかった、でももう叶わないから、叶わないからっていう妥協なの、最悪。最低、連絡を取らなくなって半年以上も経つのに、こんなにもまだ好きだよ。気持ち悪いね。気持ち悪いのが最高でしょ。

 ねえ、軽装で外を出歩ける気温になってしまったね。最悪だよ、君に会えないのに半袖を着る季節がやってくるのが怖い。大丈夫に、なれるかな

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