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【読書感想】「くじけな」前向きでないことばに勇気をもらえた話

枡野浩一さんの詩集「くじけな」(文藝春秋)を読みました。実はずっと気になっていた本でした。思い立った時には本屋で出会えなかったので、図書館にあるか探してようやく出会えました。今Amazonには中古があるのかな…?なければ図書館へ!

読み終わった時、心の砂漠にポタポタと水滴が落ち、じゅわっと土を湿らせていくように優しく温かく広がっていくような涙が出ました。


この本の中には、ストレートな前向きなことばやエールは書かれていません。かといって、後ろ向きで暗くなるようなことばもありません。

くじけそうになっていた前向きなことばから、少し引き算をしてみたら"前向きではないことば”になります。

くじけないで-いで=くじけな

夢をあきらめないで-いで=夢をあきらめな

まけないで-”=まけないて (平仮名表記ですが、本編を読むと負け泣いている様子がわかります)

そのことばだけ聞くと、やる気を失ったり頑張りたくもなくなるものばかり。しかし著者の枡野さんの手により、温かく元気のでることばが素敵に飾りつけられ、別の角度から私の心を支えてくれます。

「えー!そっち、ガードしてないよう」と不意打ちを食らう心。それがとても嫌じゃない。

一編一編が、愛と苦しみと葛藤と優しさに溢れています。前向きなことばのエールが必要なこともあるけれど、それだけではエネルギーにならないときに別角度から支えられるのも、良いのかもしれない。

この詩集の途中では、東日本大震災が起こっています。「がんばろう日本」「がんばろう東北」というストレートな前向きなことばが各地で届いていました。枡野さんは、まっすぐなことばが必要なのではと悩み「『くじけな』は、くじけたと思いました。」(本文より)と言われています。震災後の詩から、ことばの飾り付けが変化していて、捉え方も考え方も変わっていきます。

くじけても、必要ななにかがこの詩集には秘められていて、出版にいたったのだと思います。今この本に出会った私が言えることはただひとつ。「ありがとう!くじけな、で終わらないでいてくれて!」

一度くじけた『くじけな』だからこそ、私の心のガードをいとも簡単にぶち壊し、心にすーっと優しく広がっていきました。

前向きなことばに救われる時も、後ろ向きなことばに疲れる時も、元気な時も、少し心が素直になれない時も、心の片隅においておきたいことばばかりでした。


紙の本って、図書館って、素敵。出版からいくら年を経ようとも、出会いたい時に出会えるように待っていてくれるもの。探し出すこともワクワク。

写真は、佐賀県にある武雄図書館です(写真撮影スポットがあって、そこ以外は撮影禁止でした)。随分前に行ったきりですが、とても素敵な空間でした。また行ってみたいなあ。


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