#15.台本(2〜3分程度) 「作り者の中に感情を」


少女 1人
人形 1人
天の声 少女が担当する

暗転

天の声
いつの頃からなのか、私が生まれた時には既に親はいなかった。ものごころがついた時には私は独りだった。
外の世界に出ても誰もいない。孤独な世界。あるものと言えば一つだけの机と椅子。そして本棚に置かれている少しだけの図鑑と絵本。

明転  舞台の真ん中のみ照明を当てる

そして、部屋の隅に置かれている一つの人形だけだった。


目を閉じた人形が座っている

天の声
私はいつの日かこう考えた。
そうだ、この人形にたくさんの愛情を注いでいこう。もしかしたら動いてくれるかもしれないと。
それから私は、この人形にたくさんの愛情を注いでいった。

暗転

天の声  私は誰かと話してみたかった...


明転

少女が家に帰ってくる

少女「ただいま~。今ね、家の前で綺麗なお花が咲いてたから摘んできたんだ~。見て、このお花!綺麗でしょ~。」

少女は人形に花を渡す

少女「あっ、そうだ。今日は髪をとかしてあげる約束だったね。」

少女は手櫛で人形の髪を優しくとかし始める

少女「このお花はね、名前は忘れちゃったんだけど花言葉が 望みを叶える  って意味なんだって!この前本で見たの!私の今の望みはね、誰かとお話しする事なんだ~。」

少女の手が止まる

少女「ねぇ、いつになったら喋ってくれるの?ねぇ、何で君は動いてくれないの?私、この世界でずっと独りぼっちなんだよ?ねぇ、何か言ってよ!寂しいよ。」

少女がうずくまる

「ねぇ、誰か、私を助けて...」

陽気な効果音

人形の目が開く
人形が動き出す
少女の肩をたたく

人形「ごめんね、そんなに泣かないで。」

少女「…えっ?」

人形「今まで動けなくてごめんね。」

少女「えぇ?本当に...動いて...る!」

人形「今まで君が辛そうなのをずっとそばで見てきたから。ずっと君の力になりたかった。でも、全然動けなくて…やっと君の声が、君の思いが本当の意味で僕の心に届いたんだと思う。君をこの世界から救いたい!」

少女「救うって...どうやって?」

人形「僕に出来ることはたった一つ。それはね、身も心もすべて空っぽにして君を人形にすること。」

少女「えっ...私が、人形に?そのあと私はどうなっちゃうの?」

人形「不安かい?心配なんてしなくていい!人形の世界は楽しいことばっかりさ。一日中音楽が流れていてみんなで楽しく踊っているんだ!」

少女「あなたはこれからどうするの?」

人形「大丈夫、僕はいつまでも君のそばにいる。これからもずっと一緒さ。行こうよ、人形の世界へ!そこはもう、独りじゃない!」

少女「...もぉ、こんな独りぼっちの世界にいたくない。私も人形にして!私を人形の世界に連れてって!」

人形 魔法を唱える

少女人形になる
人形は少女の手に花を持たせる

人形「今まで、ずっと独りぼっちで辛かったね。そっちの世界では楽しめますように…」

2人、肩を寄せ合うように座る
しかし、人形の目は開いたまま

暗転

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