見出し画像

匂いの記憶

ガストのお手洗いに入ると思い出す匂い。

昔、子供だった頃、この匂いが嫌いだった。
酸っぱいような独特な木の匂い。
それもすかいらーくグループ共通なのか、夢庵・ガスト・すかいらーく・バーミヤンのお手洗いでは同じような匂いがした。特に夢庵の匂いはきつくてお手洗いを使うのが好きでは無かった記憶がある。

今日久々にこの匂いを感じた。ふじみ野市のガスト。

お手洗いを借りて個室に入ると独特の匂いを察知する。「あ、この匂い知ってる」と同時に子供の頃に苦手だったことを思い出す、「昔この匂いが好きじゃなかった」と。

普段は思い出さないような記憶だけど、嗅覚からの情報に紐づいて記憶が呼び起こされる。

それにしても、すかいらーくグループでは、同じ匂いがするけど、同じ材料を使っているのか、はたまた同じ消臭剤を使っているのか。真実は分からないが、久しぶりに嗅いだ匂いだなと、あまり良い記憶ではないが、蘇った。

嗅覚と聴覚は記憶を読み起こすのがうまい。
それが良い記憶でも悪い記憶だとしても。

聴覚の記憶で思い出すのは、YUKIのアルバム。
大学1年生の後期の頃、通学中に毎日聞いていたアルバム。
これを聞き返すと、そのころの通学風景―京王線の下り電車の窓から見える風景、学校へ行きたくない記憶―が蘇ってきてなんともモヤモヤした気分になる。

もしくは、少しはまったバンドの曲。
気になっていたバンドのアルバムを借りて3か月くらい聞き続けていた。が、そのバンド好きな人に告白されて付き合いだしたとたんに無理になって避けてしまい自然消滅を実行してしまった。人を思い出してしまうのであまり聞きたくなくなった曲たち。

嗅覚から感じるのは、安心する匂い。
祖父母宅の匂いや、実家の洗濯物の匂いや、抱き合った時の好きな人の匂い。

考えたけど、触覚や味覚から思い出が遡ってくることは少ない気がする。「この触り心地は、いつの何していた時と同じ」ということにはなりにくいし、「この味、いつか何していた時に食べた味を思い出す」ということも中々起こりにくい。少なくとも自分には。

そして、記憶から嗅覚を思い出すことも難しい。
小さいころ医者が嫌いだった。耳鼻科の吸引機、歯医者のドリル、内科の注射。特に耳鼻科の吸引機とお医者さんの額の反射鏡鏡(?)が苦手だった気がする。そこで、どんな匂いだったかは思い返そうとしても思い出せない。しかし、この匂い(もしくは似ているような匂い)を感じると、この記憶が沸いてくる。

一番記憶と感覚が紐づいているのは、聴覚かもしれない。記憶から聞いた音を思い出すし、聞いた音から記憶を思い出す。

次が嗅覚。匂いから記憶を思い出す。けど、なかなか記憶から匂いを思い出せない。そもそも匂いを言語化するのが難しいせいもあるかもしれない。

記憶から視覚を思い出すことと、視覚から記憶を思い出すことはできる。けどあまり良い記憶は出てこない気がする。よくない記憶が浮かんで、その時に見たものがフラッシュバックする。一種のトラウマみたい…。でもよい記憶も同じようなことは可能なはず。いい思い出の場所を再び見たときはその記憶がよみがえるはずだ。例えば、旅行の時の記念写真や再び訪れたときなんかはそうかもしれない。

触覚、味覚も記憶の思い起こしは可能だが、思い出すきっかけとしての頻度はなかなかに少ない。「この味前にもどこかで食べたことある」程度にしかならなそう。「この味、叱られて泣きながら食べたシチューの味だ」とはあまりならないし、そもそも”同じ味”というものを覚えているほど私の下は肥えていないと思う。

経験則にはなるけど、私の中では、五感から蘇る記憶というのは感覚的なことになっている。なかでも嗅覚と聴覚は、同じ(似た)感覚を感じ取るとすぐさま記憶を掘り出してくる。

するとその匂いや音が好きにも嫌いにもなる。いい記憶や悪い記憶とつながるから。できるだけ悪い記憶(嫌いな記憶や思い出したくないこと)は塞いでおきたいから、思い出させるような匂いや音を避けるようになると、好きだ曲やよく聞いていた曲を聴かなくなる。(YUKIちゃんごめんね)匂いは仕方ない。どこで似た匂いを感じるか予測が難しい。今回の「ガストのトイレ」のように特定の場所だったら避けやすいが、生理現象を我慢してまでさけることではないと思う。花や食べ物といったいい匂いより、日常の匂いの方が覚えているのも面白い。

まぁ結局はその記憶の良し悪しの度合にもよると思うんだ。

深夜につらつらと綴る、ふと考えた匂いと記憶の話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?