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【掌編小説】花咲ばあさん

こんにちは、hana.hafuriです。
(物語 どうぞ一時 ご一緒に)

この物語は、学生時代に書いたものです

今年2024の6月半ば頃、ふと、残していたことに気づき
note用に、体裁を整えて公開しました🐈️🌸

偶然にも🌸絡みの物語です
…そういうところ含め、自分らしい物語だと思っています
読み直してみても、自分に🎯さる、スキ🤍な物語でした

タイトルから予想できるかとは思いますが、お伽話フィクションとして、ご賞味くださいませ
🌸ぺこり

※私は下戸なので、お酒飲めないのですが、そういうところ含め、妄想やら想像を逞しく、で書き上げた物語でした

hana.hafuriからのご連絡


花咲はなさかばあさん』


🍃「お~い、おじいさん、
おはよう!
もう春だよ」

🌳「おお、
これは久しぶりだね、
春風の坊や。

もう春なのか。
今年の冬は
あっという間だったなぁ」

🍃「おじいさん、
なんかいいことあったの?
新芽がすごく
うきうきしているよ」

🌳「ああ、今年の冬、
わしが眠る前にな、
おもしろいお客さんが
やってきたんだよ。
あのばあさんのおかげで
わしはぐっすり眠ることができたんだ」

🍃「へぇそうなの?
どんなおばあさん?
どんなことがあったのか
お話してよ、おじいさん」

🌳「ああ、いいとも、ぜひ聞いておくれ」


🌳「それはしーんとした
冬の夜のことだった。
その夜の暗闇に、
突然突拍子もない声が響いたんだ。

かぁきぃに~
はぁぁなをぉ~
さぁぁかせましょ~』

ばあさんは
そんな掛け声と一緒に
わしのところに現れた。

ぐでんぐでんに
酔っ払ったばあさんは、
右にふらふら、
左によたよた。

ほっぺと鼻を真っ赤に染めて、
わしのところに
やってきたんだ。

あんな真夜中に、
とんでもないお客様だ。

だけどな。
そう思うと同時に、
わしは自分の中の水たちが
『とくとくとく』
と騒ぎ始めるのを感じたんだ。

その音にあおられて
芯の部分が
かっかとしてきた。


酔っぱらいのばあさんが
危なっかしいから
ドキドキしている。
たしかにそれも
あっただろうよ。

なんとそのばあさん、
枯れ枝のような手足で、
わしの幹を
むんずとつかんで
エッチラオッチラ
上ろうとしてるじゃないか。

その危なっかしさといったら
なかったな。
威勢の良いかけ声も
ばあさんの息切れで
ぶつ切りだ。

それでもばあさんは
全くのお構いなし。
あっと言う間に
わしの枝の上に立っちまった。

何をやらかすつもりやら。
そう思うとな
『どっどっどっど』と、
わしの体を駆け巡る
水の音がよく聞こえてきたんだ」


🍃「おばあさんは何をしたの?」

🌳「ばあさんはな、
フトコロから巾着キンチャクを取り出し、
その中身を
ぱっとちゅうにまいたんだ。

それは白い粉だった」

🍃「粉?」

🌳「ああ、やわらかくて温かい、
白い灰だった。
闇に舞う白い灰。

わしの枝先は
妙にざわめき始める。

そしてばあさんは
威勢の良い音頭とともに、
わしの枝という枝に、
その灰をまき始めた」

🍃「音頭?」

🌳「か〜きぃに~
は〜なをぉ~
さ〜かせましょ~♪だよ。

わしはそれでも
『なにくそ、乗せられてなるものか』
と思っていたんだがな。

そんな思いとは裏腹に
枝先のざわめきは
少しずつ、
少しずつ
大きくなる。

がまんしろ。
落ち着け落ち着け。
そんなわしの気持ちは
もうおかまいなし。

枝先はうずき始めた
つぼみたちで
満ちていた。

夜に飛び交う、
おばあさんの音頭と
灰のおと

枝先のつぼみは
その音にあわせ、
少しずつ、
少しずつ
膨れてゆく。

灰をまき終えた
ばあさんは、
さすがに疲れたのか
肩で息をしていたな。

そして巾着を
下にしてゆらし、
残った灰を
さらさらまきながら
こんなことをいっていた。


『はぁ…。
やっちまったなぁ。

酒酔いの頭だけんど、
罰当たりなことをしているっていうのは
よーくわかってる。

わかってるよ。

でもねぇ、
あたしゃちゃんと
罰を受けるよ。

爺さん、
あんたがいっちまったから、
あたしは一人ぼっちだ。

あたしが爺さんみたいに
いっちまうときは
一人なんだよ』

そういって、
ばあさんは
トスン、
軽いしりもちをつくように
わしの枝に腰を下ろしたんだ。


わしはその時に
あきらめた。

後でどうっと疲れが出るが、
もうこうなってしまったら
仕方がない。

あきらめと同時に
気張っていた力を
すっと抜いた。

するとな、
待ってましたとばかりに、
つぼみたちは弾けるように
花開いていったんだ。

あっという間に
わしの枝先には
満開の花が
広がってゆく。

寒い闇夜に
立ち込める
吐息のように、

やわらかい
開花の花びらに
わしの枝は
満たされていった。

そして満開になると同時に
花びらは、
一枚、
また一枚と
音もなく
散り始めていったんだ」


🍃「ええ!本当?すごい。
花が咲いたんだ!
なんで、なんでおじいさん」

🌳「本当だとも。
だがあれは疲れるぞ。
そうそういつも
やれるもんじゃない。

その昔にもあったがな。
どうもわしは乗せられやすくて、
困ったもんだ」

🍃「でもなんで?
なんで真冬に花が咲いたの
おじいさん」

🌳「それはな、
うぅ~ん…
正直どうしてなんだろうな。

わしが乗せられやすい
ってのがあるだろうな。

でもわからんよ。
ただ、あの灰は
特別だったからだな。

あの灰は
温かかった。
思いがこもった灰だ。

だから春を、
花たちを
呼べたんだ、
とわしは思う。

わしの枝を包んだ
満開の花。

だがばあさんは
それを夢だと思ってるようだったな。

わしの枝に
背をもたれながら、
こんなことを話していたんだ。


『あれあれなんだい。
こりゃあいい夢だねぇ。
枯れ木に花が、
咲きました♪とさ。

…きれいだねぇ…。

爺さん。
なぁ爺さんよ。

これであたしを
少しは
許してくれるかい。

あんたを
まいちまったけど、

これだけ
きっれいな花に
なれたんだからねぇ』

からから笑う
ばあさんの声。

渇いた小さな
笑い声だった。

その声にあわせて
ばあさんの体が
震えているのが
わしの幹に伝わってくる。

徐々に小さくなる
おばあさんの笑い声。

でもな、
わしの体に伝わってくる
震えは
とまらなかったんだ。


わしは言った。

ばあさんに
聞こえるはずもないがな。

『おぅい、
名も知らないばあさんよ。

ここで声を
押しころすなよ。

泣き声を我慢する必要は
ないんだぞ。

泣くなら泣いて
いいんだぞ。

お〜きな声で
泣いていいんだぞ』

わしの花たちは、
はらはら
はらはら、
闇の中へと
散ってゆく。

わしは思った。
どうか
ゆっくり、
ゆっくり
散ってくれと、な。

ばあさんの涙が引いて、
酔いが覚め、
これが夢じゃないって気づくまで、
ゆっくりとな」

🍃「どうして?」

🌳「ん?
だってな、
夢じゃないってわかったら、
ばあさんの
しわくちゃな顔が
もっと
しわくちゃになるだろう?

そんなしわくちゃな笑顔、
見たいじゃないか」

🍃「見れたの?おじいさん!」

🌳「ああ。そうとも。
ふふふ、
今のお前さんのような顔で
笑ってくれたよ。

それに栄養をもらったんだ。

今年もわしは
きれいな花を
咲かせることができるだろうよ」




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