見出し画像

持続可能な登山道の保全のために【なぜ登山道整備の事業化を考えたのか・その5】

前回の投稿に続いて、持続可能な登山道の保全活動を進めるために、積極的に自主事業に取り組むことの重要性と、その工夫について書いていきたいと思います。

まずは前回のおさらいです。


○自主事業に力を入れる理由

現在、北杜山守隊が「自主事業」として取り組んでいるものは次の通りです。
・ワークショップの開催
・企業や団体の研修やイベントの受託
・技術者や講演者の派遣
・会員制度
・物販
・寄付
・ふるさと納税

前回はワークショップについて書いたので、今回は主に会員制度、物販、寄付、そしてふるさと納税について書いていきたいと思います。
その前に大前提の話をもう一度書きたいと思います。
ここは重要なポイントでもあるので、何度も書きます。

前回も紹介した北杜山守隊の収入構成

前回から主張していることは、「民間団体自ら、財源確保の努力をしなければならない」ということです。
もちろん、行政に働きかけていくことも大切です。
しかし100%行政からの財源(補助金も含む)で活動をしようとすると、例えば首長の交代や社会情勢の変化で、予算の削減や廃止のリスクが常に付きまといます。
補助金がなくなった時点でなくなるいわゆる「補助金事業」がやたら多いように、行政財源のみを頼りにすることに持続性はありません。

一方で最近の社会情勢を例にすると、コロナ禍によって、人が集まったり移動しにくい状況となってしまいました。あのとき多くの登山ツアーが中止や縮小に追い込まれたように、登山道保全ワークショップも開催することはできなくなるでしょう。こんな時は行政財源の予算があると、活動は縮小しても止まることはありません。
もちろん会費収入や寄付収入は引き続き期待できますし、物販も生き残っています。

実際にコロナ禍のときを思い返すと、あのときは複数の山小屋支援のプロジェクトが立ち上がり、億単位の寄付金が集まりました。そのおかげで七丈小屋の運営を維持することができました。
またいち早く独自に立ち上げたオンラインショップも好評で、物販による収入にも助けられました。

このように収入構成を分散化することで様々な変化にも対応ができ、より持続性を担保することにつながると考えています。

○会員制度の大いなる可能性

北杜山守隊の一番の強みは、この会員制度にあると言っても過言ではありません。北杜山守隊の会員になるには、まずはワークショップに参加していただく必要があります。2023年度は約80名の方にワークショップに参加していただきましたが、その半数の約40名の方が会員登録をしてくださいました。

北杜山守隊の会員特典

会員の皆様には、年会費として10,000円をお支払いしていただいています。
会費収入は活動の直接的な原資にもなるので大変ありがたいのですが、会員の皆さまの「当事者意識」の高さによって生み出される活動成果のほうが遥かに大きく、もはや可能性しか感じないようになってきました。

例えば一例として「運営サポート」があります。
ワークショップや研修事業を受託したときに、実は会員さんたちが活動が円滑に進むように影で動いてくれているのです。事前に資材をある程度集めていたり、参加者のちょっとしたサポートをさり気なくしてくれたり、、、その活躍は決して目立つものではないのですが、会員さんたちの存在なくては語れない部分となっています。

もうひとつの例としては「会員限定整備活動」です。
すでにワークショップでの学びを経て参加してくださっているので、「なぜ」この作業をしているのかを理解されています。次に何をしなければならないのかを予想できるので、作業効率がハンパなく良いのです。
下の資料をご覧ください。

技術者以外の参加者がいることで作業効率が4倍!

北杜山守隊が活動している南アルプスの樹林帯での施工の一例です。
技術者2人だけで作業を行うと、資材集めなどにも多大な労力がかかることから、ガリー侵食を1m補修するのに2時間ほどの時間を要します。
ところが作業が初めての方が集まるワークショップでは、作業効率がなんと4倍となることが分かってきました。会員限定整備作業では、言うまでもなくさらに効率が上がり、修復のスピードが格段にアップします。

いま会員制度の再構築をしていて、会員の皆様にはこれからどんどん団体運営や企画実現に参画してもらおうと思っています。また会員研修もできる限り開催し、会員さんの中から、将来のインタープリターや技術者が誕生する日を夢見ています。
そしていつかは私は代表を退きます。理事も交代となるでしょう。その時に生え抜きの人が引き継いでくれたら本当に素晴らしいと思っています。

先日はオフ会を開催しましたが、「実は○○なんです!」みたいなカミングアウトが続き、会員の皆さまの特技や、やりたいことができる組織にしていきたいなと思っています。
会員制度の可能性は無限大と感じる今日このごろです。
これからますます充実させていきたいと思います。

○物販による収入

まだ本格的ではありませんが、実はオリジナルグッズを作成して販売を行っておりました!

まだラインナップは少ないですが、来年度は力を入れて展開していこうと思っています。北杜山守隊の収入は、税金や諸経費を除く全てが登山道保全活動に活かされます。つまりご購入いただくことが北杜山守隊が活動する上での直接の原資となります。

山小屋を運営していて感じることは、物販の売り上げは、本当にありがたいと言うことです。例えば七丈小屋で人気の後藤郁子さんがデザインした「黒戸尾根てぬぐい」は、おかげさまで一年を通して相当の枚数が売れています。宿泊をされない方でも、「ここに来たから」という理由で、様々なお買い物をしてくださいます。
北杜山守隊でも、皆さまが喜んでくださるものをたくさん作っていきたいと思います!ぜひご購入ください!!(笑)

○寄付による収入

来年度から本格的に取り組もうと思っていますが、北杜山守隊でも他団体と同様、有志の方々からのご寄付を集めています。

もしご賛同いただけるようでしたら、ぜひともよろしくお願いいたします。

○ふるさと納税

実はふるさと納税にも取り組んでいて、ワークショップの参加を返礼品として設定しています。ただし1泊2日のワークショップは旅行商品として販売しているため、旅行業のある株式会社ファーストアッセントの返礼品となっております。

上記以外でも北杜市が契約しているふるさと納税のサービスからお申し込みいただけます。昨年末頃から取り組んでおりますが、すでに何件もこちらにお申し込みをいただいております。ぜひご検討ください。

実は、が続きますが(笑)
このふるさと納税、実は(笑)少し作り込んでいます。

北杜山守隊が北杜市からいただいている「登山道整備委託金」の財源が、なんとふるさと納税なのです。これは返礼品を設定する前からそうしてもらっているのですが、寄付者の気持ちが返礼だけでなく実務でも活かせるようになることを願っています。

いかがでしょうか。
民間団体でも様々な工夫をすることで財源を作り出すことができ、登山道保全活動の持続性を高くすることができることがお分かりいただけましたでしょうか。
また単に財源を確保するだけでなく、そこに関わる方々の「想い」をいかに具現化することが大切かがお分かりいただけたら幸いです。

まだまだ発展途上ではありますが、これからも失敗を恐れず試行錯誤を繰り返し、より良い形を模索していきたいと思います。

5回にわたって書いた「登山道整備」に関する記事は一旦こちらで終了としたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。

間もなく2023年のアニュアルレポートが完成しますので、またこちらでも紹介をさせていただきたいと思います。

よろしければサポートもよろしくお願いします。いただいたサポートは、登山道の保全やヒマラヤキャンプといった、登山文化を次世代に引き継いでいく活動費として使わせていただきます!!