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今日のランダムおひねり

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私が引いたランダム単語ガチャででた単語3つで文章を作るというワークをしてくれた方々の文章をまとめてみました。
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ため息の行方はとてもありふれた

「”漸近線”って言葉があるじゃん?」 美桜のネタふりはいつも突然だ。 「ん? あの、数学というかグラフとかの?」 孝徳はひっくり返りそうになった声をなんとか乗りこなしきって何とか聞き返した 「あれってさ、なんか『救い』に見えたんだよね。『低空飛行墜落せず』みたいな感じで、無にはならないんだな、みたいな。こう、時間がどんどんスローモーションになってどんどん遅くなっても全く動かなくなるわけじゃないんだな的な」 また突然訳のわからないことを言い出した。 でも言ってることがわかるよ

白黒

回路図を なぞる瞳が割り切らぬ 道と別れと 恋心 #ランダムおひねり

よく言ってるセリフ #ランダムおひねり

いやさ、適当にパパってやってるように見えるけど、それって単にこうしたら面白いじゃん? って思ってやってみてるところだから楽しげにやってるだけで真面目に集中してやってる可能性だってあるじゃん? って結構いつも言ってるセリフが出てきちゃったので、今日はこんな感じで。 #ランダムおひねり

夏に立てる木、冬に立てる木 #ランダムおひねり

「短冊とか気取ったもんじゃなくて、万札ぶら下げとけよな……」 やたらとかわいい声でつぶやかれてた台詞があんまりにあんまりだったので思わず瞬間的に振り向いてしまった。やたらに勢いが良かったかもしれない。でも、振り返らずにはいられなかったのだ。 そこにいたのは、さっき聞いたやたらに可愛らしい声とは対照的に、蠱惑的とでも言ってしまえるようなボディラインのでる、露出も多めな……お仕事中ですか? と聞きたくなるような派手な女性だった。いや、多分ほんとにお仕事中なのだろう。この暑い中、

切り取られたツナガリのつながり #ランダムおひねり

「蛍光ペンってさぁ、長い年月経つとかなり変色するんだねぇ」 こんな、単なる感想を口に出せば「え、まじ? あ、ほんとだ。元これ何色? んー?? 水色?」とすぐに反応を返してくれる相手がすぐそばにいるって、ものすごい幸せなことだよなぁ、なんてしみじみしてしまう。 「そう、水色。よくわかったね」 「ほら、何となく残ってる、青さが」 「確かにそうだね……」 言いながらパラパラと、はるか昔のプリントをめくる。 大学時代の、プリント あの頃は『こんなもん全部覚えられるわけないじゃん』と

矢も鉄砲も、降ってきたりはしないわけで #ランダムおひねり

面白いことを書こうとおもったって面白いもんなんて書けるわけもなく……古の漫画の主人公みたいに人中のあたりに鉛筆を挟みながら、椅子の背側の脚を支点にゆーらゆーらと漕いでみたところで、結果は彼らと全然変わらないわけだけれど、私には誘いに来てくれるジャイアンもブタゴリラもいないわけだ。 くそう。 何も書けねぇ。 そもそもさ、鉛筆だって生協の注文の時くらいにしか使わなくなったのにこのためだけに机の上に置きっぱなしにしてあるんだよ。こういう無為の時間を過ごすこと前提じゃねぇか、覚悟

砂糖を試したら減りました。  #ランダムおひねり

またか……と、俺は深い深いため息をついた。 「そんなところにあったって気づくよ、ほんとにもう」と、誰もいないのに口に出してしまった。一緒に住んでいた両親も兄弟ももうここにはいないので、帰宅したって一人なのだが、流石にこれには声がでた。 先月も、半年前も、去年も、一昨年も……その前は2年くらいは開いていたような気がするんだが。だんだん間隔が短くなってきている。どうにかならんもんか……。あの神社のじいちゃんに話ができれば早かったんだけど、5年前に死んじまったからなぁ。 玄関に

伸びる長さと、縮む距離 #ランダムおひねり

「ほら、これでいいじゃん」 そう言ってふさっとキッチンペーパーを私の持つさらにかけて輪ゴムで止めた彼の行動がラップがなくて大慌てしている私の動揺を完全に止めてくれた。 「心配ならほら、アルミホイルもかけとけばいいよ……あ、いや、片っぽでもいいっていうか多分ホイルだけでもよかったんだけど最初に目についたのがこっちだったから……」 なぜだか異様に慌て始めた彼を見て、新たな焦りが私の心にタックルをかましてきた。 「いや、えっと、いやほんとその発想はなかったからめっちゃびっくり

そんなのきっとどうでもいいけど #ランダムおひねり

ねえしってる? 前代未聞って言われたファーストクラスでの出来事。 シンプルな勘違いでビジネスの客がファーストに案内されて入ってそのままどうせならってフルサービスを受けた挙句に勘違いだから料金いらないよね?ってふざけて言ったらほんとに追加料金取られなかったって話。 どこが前代未聞かって? うん、ありそうな話だよね。 なんかな、めっちゃ偉い人だったんだってそれ。 ほぼタカリ、ってこと。 そう言うウルトララッキーって、本当に本当の偶然で起こることって奇跡的な確率なのに

1匹見たら100匹いるとおもえれば #ランダムおひねり

「ねぇ、『粗末』ってどういうことだと思う?」 そう言って僕の目をじっ、と見据えた彼女はそのまま続けた。 その目の前には僕の作ったミートソースパスタ。 出来立てでホカホカだ。 「こういうもののことを言うのよ。直接の意味とはちょっと違うけどね」 「……どういうこと? 普通の缶詰にちょっと手を加えてただけじゃないか」 「そう思ってしまってるってことが、粗末なのよ」 大きなため息をついて、彼女は席を立ってそのまま玄関へと向かう。苛立ったような大きな足音。 「もう来ない

ある日の、やわらかな #ランダムおひねり 5回目

「え、回し蹴りとドロップキックって違うの!?」 心底驚いた!を絵に描いたような鮮やかな表情を浮かべてハルが叫んだ 「いや違うよ全然。ドロップキックって、跳んで、両足を揃えて思いっきり蹴るやつで……」 「えっなにそれ凶悪」 「回し蹴りは片足を軸にして回すように蹴る、いわゆる普通の蹴り……」 「えっ、特殊な技じゃないの!?」 「いやお前……もうちょっと調べるなり何なりさぁ……」 夕方のことだ。ハルがものすごく興奮して、興奮と喜びでパンパンになったほっぺたを膨らませながらかけてき

一生物の心残り(ライトバージョン) #ランダムおひねり 4回目

めっちゃ憧れの人に街で偶然出会ってさ ツーショットをお願いしちゃったんだよね。意気揚々と。 ちょうどあたりに人はいなかったし 今このタイミングを逃しちゃったら絶対に2度と会えないだろうって思ってさ なのにさ!!! そんな、千載一遇のチャンス! これを逃したら2度とない!!!みたいな時でさ めっちゃ顔作って、緊張しまくっててプルプルしてるのにキメ顔してたのにさ!! 気づいちゃったんだよね、そのさぁ 真後ろにあった噴水のあたりから声がしてるのに。 グァグァグァグァって。

新世界 #ランダムおひねり 3回目

最近流行り始めているスポーツがある。 この、ステイホームが長く続いている時代だからこそのスポーツとしか言いようがないのだが、正式名称はテーブルボール、という。 いや、卓球ではない。 そういう、現代は相手が必要なスポーツが気軽にできるような世界ではなくなってしまった……だからこそこんなスポーツが流行るのだろうけど。 いや、言われてみれば「スポーツ」という言葉の定義も今は変わってしまっているのかもしれない。テーブル上でできる、個人が自分の身体能力を使ってその技能を向上させるこ

知らなかったと気づかなかったが赤に癒され

いや、知らなかったんですよ。 「呼吸してるからCO2出るの当然じゃん」みたいな風に思ってて、発酵もしてるなんて思ってもみなかったんです。思考停止ですね。そうですね。 言われてみたら当たり前なんです。 天然の酵母がめっちゃたくさんついてる果物を ”あんこ” なんていう糖の塊でくるんだらそらアルコール発酵が起こるのは当然なんです。酸素ないんだから嫌気環境なんだし。嫌気環境……密室に酵母が糖分と置かれたらそりゃ一方的な消費が起こってお子様たちであるアルコールと二酸化炭素がボッコ