1匹見たら100匹いるとおもえれば #ランダムおひねり
「ねぇ、『粗末』ってどういうことだと思う?」
そう言って僕の目をじっ、と見据えた彼女はそのまま続けた。
その目の前には僕の作ったミートソースパスタ。
出来立てでホカホカだ。
「こういうもののことを言うのよ。直接の意味とはちょっと違うけどね」
「……どういうこと? 普通の缶詰にちょっと手を加えてただけじゃないか」
「そう思ってしまってるってことが、粗末なのよ」
大きなため息をついて、彼女は席を立ってそのまま玄関へと向かう。苛立ったような大きな足音。
「もう来ないからわたしの荷物は宅急便で送り返して」
答えるまもないくらいの速さで、彼女はでていってしまった。こんなにあっけなく、終わってしまうのだろうか。何がいけないというんだ
普通のパスタを普通に茹でて、フライパンの上に缶詰のミートソースと、旨味を出せるかな?と昨日食べたカップ麺の残り汁も入れて煮立たせて、ついでにワインも少し足したからむしろ豪華なのに……
きっと何か機嫌が悪かったんだろう。あしたまた連絡してみよう。そう思って彼女の残したパスタを美味しく平らげた。うまいじゃん。ねぇ。
サポートいただけたらムスメズに美味しいもの食べさせるか、わたしがドトります。 小躍りしながら。