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バーキーと呼ばれた私 ~23.心の友~
カラオケの件から一週間経ったが、あれからカオリの生活に特に変化はなかった。いや、変わるのが怖かったかもしれない。残念ながら人は簡単に変われない。カオリは沢山の人達に優しく有り難い言葉を頂いたけれども、一晩寝て仕事で男性を相手にしてたらあっという間に忘れた。
しかし、少しずつカオリも考えるようになった。女性は男性に言われた悪気ない一言を何年も根に持つように、元カレから言われた優しい言葉たちは、カオリの脳みその奥底にこびりついていた。決して無駄じゃない。でも、それが効果を表すのがいつになるか分からない。もしかしたら一生効果が出ないかもしれない。
日を増すごとに悩む日が増えた。。どうすればいいか分からなくなってきた。何が正しくて何が悪いのか。一人では抱えきれない。悩みに悩んだカオリは、親友のアンナを呼び出した。
─────
地元の海にアンナを呼び出した。この海は思い出の場所だ。中学時代、先輩に呼び出されてシゴキを受けた場所、友達と沢山飲み会をした場所。青春時代の辛く楽しい思い出が沢山詰まった場所で、アンナを呼び出した。
「久しぶり。カオリちょっと太ったね」
『アンナ、いきなりゴメンね』
「全然いいよ、私も会いたかったし」
いきなりの呼び出しにも関わらず、アンナは優しく微笑んでくれた。今は彼氏と同棲してるので、今この時間二人の子どもの面倒は彼氏に見てもらっている。お互い車で来たので缶コーヒーで乾杯した。
カオリは一通り今の悩みをアンナに告白した。セイヤとの事、クリスの事、ヨウスケの事。今の現状も含めて自分の思いを包み隠さず全て話した。
「あのさ、カオリ」
『何?』
「カオリの好きなようにしていいと思うよ」
まさかの答えだった。アンナはお互いの子ども同士で仲もいいし、絶対に家に帰ってクリスと一緒になれと言うと思った。
「カオリの好きなようにしていいと思うよ。クリスと一緒なってもいいし、ヨウスケでもいい。あと、そのなんだっけ、セイヤさん?と一緒になってもいい」
『アンナ・・・』
「うちの子達がカオリの子ども達と遊べなくなるのは少し寂しいけど。でも、カオリがどんな道進もうと、私達はずっと友達だよ」
思いがけない親友の言葉に、カオリの頬を涙が伝う。
「カオリと友達になれて良かった。沢山一緒にハメ外せる親友がいてサイコーだった!カオリを不良にしたのは私だしね。私の責任もあるし」
『ううん、アンナと友達になれて私が一番感謝してる。すごく楽しかった!』
「だよね、だから私達はずっと友達。カオリはいつか落ち着けばいいから」
カオリは嬉しくて涙が止まらなかった。しかし、それと同時に罪悪感がこみ上げてきた。家族への罪悪感が。
『でも・・・私は家族を捨てた・・・』
「まだ完全に捨てた訳じゃないでしょ?捨てるにしてもちゃんと筋は通しなよ」
『そうだね・・・』
「まぁ通せないなら仕方ない。何かあったら私が何とかするよ、友達だしね!」
親友の優しさ、気遣いにカオリは心を打たれた。アンナのその言葉は、人の目や世間体を気にしたものは一切なく、友を思いやった真っすぐな言葉だった。そして、もう彼女の中で答えは出た。進むべき道は決まっている。
(次回、最終話)
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