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とうきびと少女

砂利道隔て
黄色いとうきび畑
白いとうきび畑
それぞれ 果てなく並んでいる
対照的な色でさえなく
でもどこかはっきりとしている

1時間くらい経ったであろうか
地平線から
少女が現れた
同じくらいの歳だろうか
会ったことのある気がする
いつの記憶であろうか

少女は言った
1年ぶりだと
ここはどこかと問えば
生死の境らしい
私には訳がわからなかった

辿り着かないと分かっていながら
少女を連れて
私は地平線を目指した
疲れた気がして
自分勝手にも
ベンチに座った
少女は隣に黙って座った
上品な座り方だった

少し思い出した
少女はこんな人ではなかったはずだ
でもいつも通りな気もしなくはない
私は人を忘れるくらい
私は人を忘れるくらい...

少女の肩に
額と鼻先を擦った
強く擦った
少女の手はぬくかった
私の体は冷えていた
肩は少しずつ濡れていった...

月の出る頃
少女の服は白かった
私の服は黄色かった
私はぬくかった
少女は冷ややかに眠っていた

少女は私を救った
私は少女を白い世界に売った
そう考えた時
私は申し訳なさに
白とうきびの根をえぐっていた

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