<ギリシャ相続法(遺言なしの場合)について>

   以前同業者から質問があったものの、回答する必要が無くなったようなので、途中まで調べていた簡単な概要をnoteにあげます。

1 法源

   ギリシャ民法典(Astikos Kwdikas(AK)アスティコス=コーディカス、これは民事法ということです。)の1710条から2035条が主要な法源なります(他にもあるのでしょうけど。)。この中には裁判所(プロベートコート)検認(相続証明)の手続の規定も含まれています。

2 相続に関する国際私法の比較

(1)日本での話

   日本国内で、相続準拠法(通則法36条)としてあるA国の法として指定される場合、反致(A国の国際私法が日本法を準拠法としている場合、そのA国の国際私法も考慮して、日本国内では日本法を準拠法とする)を検討することになります(通則法41条)。

(2)ギリシャ

ア 従前

   一方、ギリシャは反致否認主義の国ですので(同国民法32条)、ギリシャ国内では、他国の国際私法規定を考慮しないことになります。そして、ギリシャは、かつては日本と同様に被相続人の国籍国(本国)を相続準拠法としていました(同国民法28条)。ただし国内の不動産の相続及び動産の物権変動に関しては1856年民事法5条第2段落で、ギリシャ法の適用が認められているという指摘もあり(注1)、そうだとすれば、相続準拠法の統一主義が貫徹されていないことになります。

また、ギリシャは、死亡よる財産の相続準拠法に関する1989年のハーグ条約も批准しておらず、相続準拠法の選択も認められていませんでした。

 イ EU相続規則

    しかしながら、現在、MギリシャはEU相続規則に批准しております   (そして、同規則は平成27年8月17日以降の死亡に適用されます。)。同規則は被相続人の常居所地法を原則とし(同規則21条1項)、例外的に法選択を認めています(同規則22条以下)。反致についても草案では基本的に認められていなかったのですが、同規則では認められています(同規則34条)。

反致否認主義国であるギリシャとEUの相続規則との関係は気になります。

3 相続(以降、条文は割愛させていただきます。)

 死亡により、法または遺言により包括承継されます。財産が資産負債を一切含むこと一身専属的な権利は相続されない点は日本と類似しています。相続人は年齢及び行為能力関係なく、胎児も相続人となる場合もあります。

4 遺留分相当の制度

 遺言ではじかれても一定の親族ないし配偶者には法で認められた持分が認められる場合があります。

5 法定相続人と相続分

 相続順位は、血縁関係に基づく4順位と、そうでない2順位(生存配偶者、国)、6つの順位があります。

(1)第1順位

 卑俗(代襲、再代襲あり。嫡出、非嫡出、養子も平等)で、等割になります。

 ただし、第1順位の場合で、別途生存配偶者がいる場合は、生存配偶者が全体の4分の1の持分になります。

(2)第2順位

 尊属

 被相続人の両親、兄弟姉妹、被相続人の兄弟姉妹の子(孫)で、兄弟姉妹が死亡している者です。異母(夫)兄弟姉妹、兄弟姉妹の子(孫)の持分は、兄弟姉妹の2分の1になります。

 ただし、第2順位の場合で、別途生存配偶者がいる場合は、生存配偶者が全体の2分の1の持分になります。

(3)第3順位

 祖父母(祖父母が死亡している場合にはその祖父母の子(孫))で、祖父母が両方とも生存していれば等割で、子の場合にも等割(孫は株分け)になります。

 ただし、第3順位の場合で、別途生存配偶者がいる場合は、第2順位と同様に、生存配偶者が全体の2分の1の持分になります。

(4)第4順位

 曽祖父母(系統関係なし)→これは…ところで生存しているのでしょうか…

 ただし、第4順位の場合で、別途生存配偶者がいる場合は、第2順位及び第3順位と同様に、生存配偶者が全体の2分の1の持分になります。

(5)第5順位

 生存配偶者(有効な婚姻があればよく、婚姻期間は問われません。)

 第1~第4順位の場合の、生存配偶者の持分は、上記で述べたとおりです。

 ところで、内縁関係の場合はこの順位に含まれていません。内縁同志であれば、同事情を公証することで、相互に相続できます(この場合、被相続人に第1順位の相続人がいれば6分の1、第2、3、4順位の相続人がいれば3分の1、第5順位であれば全持分となります。)。

 なお、無効な婚姻であっても、婚姻締結当時に生存配偶者が善意なら相続人として扱われる規定があります。持分以外にも、居住や家具等の動産に関して、保護規定があります。

(6)第6順位

   国になります。


注1:Ismene Androulidakis-Dimitriadis,Elisabeth Poulou(2015),  Private international law in Greece, Wolters Kluwer ,139

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