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ニュースから見る、台湾の方と台湾以外の方との(台湾での)同性婚について

昨今、このようなニュースがありました。台湾で婚姻届の受理を求めて提訴した台湾人と日本人の男性カップルが、記者会見した、というものです。

台湾では、法が改正され、同性婚が認められるようになりました(東アジアで初ではないでしょうか。)。しかしながら、これにより台湾で同性婚が認められるのは、主に台湾の方同士のカップルの場合です。この報道のケースのように、台湾の方と日本人の場合では、どうなるでしょうか。

台湾地域内での、国際的な婚姻について、どの地域や国の法を適用するか、という問題については、台湾の渉外民事法律適用法という法律の46条がこれを定めています(日本にも同じようなルールがあります。法の適用に関する通則法24条1項から3項です。)。
①婚姻の成立的成立要件(同性で可能か、何歳から可能かなど)は各当事者の本国法(国籍や市民権等のある国や地域の法)
②婚姻の形式的成立要件(方式)はカップルの一方の本国法か台湾法(つまり台湾人とA国人が台湾で婚姻する場合の方式は、A国法でも台湾法でもOK、ということになります。)。

以上のように、婚姻に関して、台湾でもどの国や地域の法を適用するか、が問題となります。そして、このケースで問題なのは、上記「①」です。各当事者の本国法ですので(この点の理由は割愛します。)、一方が台湾の方で台湾法で同性婚が認められていても、他方の国や地域の法で同性婚が認められていないと、台湾においても、婚姻が有効に成立しないという判断が台湾の身分登録機関でなされる可能性があります。

ですので、上記のニュースも、日本法が同性婚を認めていないことから、受理されず、その結果、提訴に至ったと考えられます。

しかしながら、このニュースの記事では、別の事例、つまり台湾の方とマカオの方の事例については、「昨年5月、台湾とマカオのカップルが婚姻届の不受理取り消しを求めた裁判で勝訴したのを受け」とあります。マカオも日本同様、同性婚を認めていないのですが、何故マカオとのケースでは勝訴したのでしょうか。

この点については、裁判例を把握していないのですが、報道によれば、このマカオの方は1996年から台湾に居住していたため、弁護士が台湾に常居所があると主張したとあります。

そして、台湾の上記で述べた法律の6条は、当事者の本国法を適用する場合において、その「本国の国際私法(国際的な問題についてどこの国や地域の法律を適用するか決めるルール)」が台湾法を適用するとしている場合には、台湾の法律によることができるとしています(反致といいます。日本にも同様のルールがあります。)。

そこで、マカオの国際私法である1999年8月3日民法(旧宗主国であるポルトガル民法に似ています。)の48条は、婚姻能力は当事者の「属人法(personal law)」によるとしており、その「属人法」は、30条により「常居所」(一定の期間平時生活の拠点としている場所)としているのです。

つまり、マカオの国際私法上、マカオの方について、台湾に常居所が認められるのであれば、マカオ法ではなく、台湾の方が適用される=同性婚が可能となる。ということが考えられます。

翻って、マカオの方ではなく日本の方であった場合はどうでしょうか、日本の国際私法は、婚姻について当事者の本国法によるとしているので、日本法となり、台湾法によることができません。したがって、この報道では、その点をどうクリアしていくか、ということが焦点になります。

なおマカオの事例の報道では、台湾の渉外民事法律適用法という法律の46条については、一方が台湾の方なら同性婚を認めるべく改正案が、と記載されています。改正がなされれば、提訴をしなくても同性婚は(日本国内ではなく、台湾では)認められそうです。

(当職は同性婚の是非に一定の立場を有する者ではありません。)



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