セーシェルの改正民法案中の国際私法規定(2018年7月24日時点)

セーシェルの民法典(1975年法)は、仏法(ナポレオン法典系)の影響を受けた民法で、2281条(経過規定等除く)と大部な民法典です(日本民法は、最後が遺留分ですが、同国では取得時効期間の定めです。)。

同法律につき、2017年に改正法の草案が作成され、今般国会で審議されているとのことです(注1、同サイトでは、改正部分は全体の10%だそうで、残部は同じ定めとされています。)。

仏法の影響ということでしょうか、(イギリスのあと、過去フランスが植民地化しています)、国際私法規定も簡素で民法の初めに規定されています。そこで、改正法案の国際私法規定についてノートします(法案については、注2)。

<国際私法規定について>

9条:公序についての規定です。

公序は司法上の合意により排除できず(改正法9条(1))、かつ、明示での主張が不要です(改正法9条(2))。

10条:住所及び常居所の規定です。

住所(domicile)は人の常居所、と定義されていいます(英米法系のdomicileとは概念が異なることになります。改正法10条(1))。

そして、常居所の決定要素は(例示です)、当該人の利益の中心地、通常の住居地、居住が一時的なものか固定的なものか、物理的に人が滞在する期間、当該地域の言語や文化への順応、当該国への社会的契約等となります(改正法10条(2)(3))。

また、常居所は1か所(改正法10条(4))であり、新たな常居所が生じるまで喪失しません(改正法10条(5))。制限能力者の常居所地は後見人のそれと推定されます(改正法10条(6))。

現行法では、住所地(domicile)の取得(18歳ないし婚姻で取得する)や妻のdomicileについての規定がありましたが、英米法上のdomicileに近い定め方でした(現行法3条3項、4項、5項)。また、常居所の決定基準も改正法よりも簡素です(現行法112条2項)。

11条:人の地位及び能力に関する規定です

この問題は、住所地法(改正法10条のとおり、常居所です。)が準拠法となります。日本をはじめとする国は、この人の地位及び能力をさらに細かく分けて準拠法を定めていますが、これは、タイの国際私法にも似ています。)

現行法では、この問題については、人の能力は住所地法(及び各法律の行為の法)、地位は各法律行為の法とされていました(現行法3条3項)

12条:不動産に関する規定です。

この問題については、不動産所在地法になります。

現行法では、一方的抵触規則(セイシェル法による)でした(現行法3条2項)

13条:海外において、セーシェル国内の財産に担保を設定することは、セーシェル法に適合しない限りできません(現行法2128条と同様の規定です。)。

14条:契約の準拠法です。

当事者自治が準拠法(proper law)について採用されています(改正法14条(1)(2)(3))。現行法は、国際売買につき各種国際条約(統一法)による場合及び条約に規定の内部分の当事者自治を認めています(現行法3条7項、ただし6項参照。)


ここまでが民法中の国際私法規定で、15条以下は実質法(人の地位及び能力)となります(なお、経過規定として、名誉棄損規定にイングランド法(を国内法化した現行の1975年法の1383条3項が適用されるというものもあります。同条同項は、不法行為責任につき、名誉棄損の場合には同法が適用されず、イングランド法が適用される旨を定めています。)




注1:http://www.nation.sc/article.html?id=259675

注2http://www.gov.sc/eParticipation/papers/Civil_Code_of_Seychelles%20Bill_2017.pdf

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