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1月26-28日 ハマカルシネマデイズ in浪江 開催記録

経済産業省が2023年6月に立ち上げた福島芸術文化推進室を中心に、新たに魅力あるまちづくりの一助となるよう、映画・演劇・音楽など、人々の心を潤す力を持つ芸術文化(Culture)により、浜通りを耕す(Cutivate)様々な取り組み「ハマカル(福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト)」。

その事業のひとつが「ハマカルアートプロジェクト」によるアーティスト・イン・レジデンス(福島県12市町村への芸術家の滞在を通じて、地域住民との交流や芸術文化における地域の魅力の掘り起こしを行う)支援なのですが、今回は「ハマカル」総体のイベント「ハマカルシネマデイズ」として、浪江町にて映画の上映とトークイベントが行われました!

「ハマカルシネマデイズ」概要

       開催日程:2024年1月26日~28日
       ・26日 18:00~20:00
       ・27日 11:00~18:00
       ・28日 10:00~17:00
       於:秋桜アリーナ(浪江町地域スポーツセンター)

トークセッションの様子

※本記事では「浜通りで映画をつくること」と題し、27日開催の相双フィルムコミッション代表 根本 李安奈 さんをファシリテーターとした、今年度のハマカルアートプロジェクト採択事業者である、板橋基之さん(ベーシックシネマ・映画監督)、冨田三起子さん(フーリエフィルムズ)、小田 香さん(映画監督)、佐藤亮介さん(福島中央テレビ)らによるトークセッションの様子をお伝えします。

ー各登壇者らの紹介記事はコチラー

■板橋基之 + ベーシックシネマ

■ タル・ベーラ、小田 香、公募による8名の映画制作者 + フーリエフィルムズ

■福田果歩 + 福島中央テレビ


相双地区にもフィルムコミッションができた

2023年、ファシリテーターの根本さんが主宰となり、相双(相馬郡・相馬/南相馬市・双葉郡)地区へのロケ誘致・サポートを実施するフィルムコミッションが発足しました。

相双フィルムコミッション 代表の根本さん

冒頭で根本さんは「山や海などの自然をはじめ、馬事文化など魅力的な撮影スポットが多いこの地域に撮影ロケ等の呼び込みを実施することで、様々な所を見て回ってもらう機会の創出や、映画等であれば撮影班はもとより、視聴者の来訪まで期待できる。そして地域の方々にもぜひ、エキストラ等での関わりなど含め、楽しんで受け入れて頂ければありがたく、そうした流れが自身の育ったこの地域の未来につながって行けば何よりうれしい」と挨拶されました。


「浜通りで映画を作るメリット、映画界のメリット」とは

セッション1つ目のお題として挙げられたこちらの内容について、小田さんからは「作り手にとっては、いいことしかない地域。こうしたスペースや機会を用意してもらって、聞いたことしか無い福島に実際に触れることができる。確かにロケ日程が終われば、各自は自宅に帰るけれど、我々が見た景色や触れ合った人はどこか遠い所の存在ではなく、我々の暮らしと地続きであると考えていて、そうした意味で、ロケ・撮影がそうしたつながりを意識し始めるキッカケとなれば素晴らしいことだと思う」とコメントされました。

タル・ベーラのもとで映画を学ばれた小田さん

また、板橋さんは東京調布にかつて存在した"日本で唯一、映画撮影所内に存在する学校"であった『日活芸術学院』を例として「調布では学生が映画を撮るとなると、地域の方々がみんな協力するというカルチャーがある。それがこの浜通りでも起きれば楽しいと思う。そして、この地で映画文芸に触れ、世界に人材が出るようなケースが起きるのも面白いと思う」とコメントされました。

震災前から映像を通して浪江町と関わりのある板橋さん

今回採択の活動(ハマカルアートプロジェクト)で叶えたいこと

2つ目のこちらのテーマについては、板橋さんから「(自身は浪江町の神社再建を追ったドキュメンタリーを制作しているので)浪江町で上映会をしたいと考えている。そして可能であるならば、神社に見てもらうように、防潮堤に投影する"奉納上映"をしたい」とユニークなお話しが出ました。

強い意気込みを語った冨田さん

また、世界的な映画監督 タル・ベーラを招聘した冨田さんからは「(タル・ベーラによるワークショップ受講者により)8本の作品が出来てくるが、それぞれのカラーが出てくると思われる。プロジェクトとしては2週間の撮影期間のみが対象となるが、撮影を続ける人もいるだろうし、作品の宣伝をしたい人、タル・ベーラのコメントが欲しい人など出てくると思われる。プロジェクトチームとしては、ぜひそのあたりも支援していきたい」と、地域における映画文化の萌芽を、全面的にバックアップしたいといった力強く語っていました。

浜通りで映画を作ることへの課題

最後の議題として出たこちらに対しては、冨田さんより「現状なんとか工夫して対応しているものの、宿泊施設がない場所に行きたいという撮影側のニーズには、なかなか対応し辛い現状がある」と。
そして佐藤さんからは「飲食店の数が少なかったりするので、現状ではお弁当の手配なども不便な部分があるのも課題だと思う」と、震災被災地ならではの、インフラ部分に関する課題感が提示されました。

佐藤さんからは福島県出身で映像に関わるという視点でのコメントも

本イベントを通して

地震・津波・そして原子力被災地において、芸術面の振興の種を蒔き、招聘・来訪の機会を創出する「ハマカル」事業。
そしていよいよ、地域に存在する"域外需の獲得"という課題を、地元の民間組織として誘致から受け入れ・サポートまでを行う相双コミッションの様な地域経済にも寄与しうる受け皿が生まれてきたというのは、『芸術文化により浜通りを耕す』カルチャーの双葉が出てきた形と言えるのではないでしょうか。

これからも、芸術文化における浜通りの発展には、目が離せません!