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まちがいだらけのヘッドホン選び(7)~そして選択へ~

前回までのあらすじ

https://note.com/hamachiichiban/n/n44ef47472fae(注意書きあります)


蘊蓄おじさんに連れられて、やっとヘッドホン屋さんに着いたひろし君。
店員さんとおじさんの会話は無視して
試聴をはじめると
あれよあれよという間に、ヘッドホンそれぞれのちがいが感じられてきたのでした。

はたして、ひろし君の選択は・・?


第7章:まちがいは認めて、全部ひっくるめて良かったっていえる生き方をしていくしかないんだよね、結局




7-0 井戸端


「おじさん、ぼく、このヘッドホンがいいや」










「私もハイレゾで限界まで上げたら、ガラスの向こうのフィル・スペクターが見えてきて・・」

「ああ、あなたもですか・・」



「おじさん、ぼく、このヘッドホンがいいや」








「ハイレゾで録ってるのにセキをする客って何なんですかねえ」

「本当。卵パックみたいに喉を潰したい」



「おじさん、ぼく、このヘッドホンがいいや」






「おこづかいで新譜を買うのか、オーディオを新調するのか。究極の選択ですな」

「そうですね、オーディオは旧譜をすべて、生まれ変わらせますから」



「おじさん」



7-1 君に決めた

「このヘッドホンがいい」












「これ、かい?」




「うん、これがいいんだ」

「ゲーミング、かい?」

「うん」

「ゲーミングヘッドセットかい?」

「うん」

「どうして?」

「だって、グラデーションで光るんだよ」




「光るのかい」

「光るんだよ」

「そうかい」




「でもひろし君、ゲーミングヘッドセットなんて、言ってたかい」

「うん? ヘッドホンでしょ、これ」

「いや、ヘッドホンというか、ヘッドセットだな。ゲーミングの」

「でもヘッドホンでしょ」

「ヘッドホンかな」

「ヘッドホンじゃ、ないの?」

「ヘッドホンか・・ヘッドホンの、一種、かな・・」

「はあ?」

「ヘッドセットだし、ゲーミングだしな」

「なにが? ちがうの? はあ?」




7-2 スペック


「本当にこれがいいのかい」

「だって、光るんだよ。グラデーションで」

「ほお」

「1色はよくあるけどね、あれはダサい、くそだ。
 3色はないとだな。
 あとキーボードも光らなきゃ。
 パソコンもね。
 あとパソコンはグラフィックボードが、見えるところで回ってないと。
 変身ベルトみたいに。
 全部光らないとダサい」


「ぜんぶ、光りたいのかい」

「そうでしょ」

「ほお」

「そりゃ、そうでしょ」

「ほお」

「こっちとも迷ったんだけど、
 これはあんまりグラデーションじゃないから」

「グラデーションが決め手か・・
 ちゃんと、ほかのものも、よく見たのかい?
 スペック表や・・」


「そうだ。
 スペックにぜんぜん書いてないんだよ。なん色で光るのか」


「何色で光るのか」


「LEDの・・色の、数が、書いてないんだよ」


「【LED発光色数】・・か・・
 その項目は確かになかったな・・・・」


「ふしんせつだね」


「申し訳ありません」



「でも、どうだい。
 ハイレゾとか対応してないんじゃ」

「いや別に・・ライブ行くし」

「これは・・ええ、5千円で
 それでマイクもついてて、大丈夫かい。おじさんもっと良い、
 良いっていうか高いやつでも・・」

「でも、グラデーションするのなんて、もう、ないじゃないか」

「マイクとオーディオインターフェースつけて、マイク部分だけでも補完して」

「マイクは光るの?」

「・・じゃあ
究極のナチュラルサウンド、TAGO STUDIOのモニターヘッドホン「T3-01」(ティースリーゼロワン)の、
廉価版の「T3-03」ね、
ゲーミングヘッドセット版があるんだよ。
ミュージシャンも御用達のTAGO STUDIOだよ」






「それ光るの」


「・・光らないかな・・」




おじさんの、よくないところは、ばくはつすんぜんです。



「だめだ音で決めなきゃ。
 なんだゲーミングヘッドセットって。LEDって。
 オーディオをなめてんだよ。こういうのは。
 だいたい耳、見えんのか?
 誰に向かって光ってんだよ。
 通信相手のことなんて考えるなッ
 音源と自分の一対一、真剣勝負なんだオーディオはッ」

「うるせえ」

「うるせえとはなんだ。ああ、ノイズキャンセルしてるから聞こえないね」

「お客様」

「うるせえ、蘊蓄おやじ。うん・ちくお。うんち」

「お客様」


そのとき、5時の鐘が鳴りました。


7-3 けんかをやめて

すると、いままでいたはずの店員さんは、どこかへとつぜん、姿をけしてしまったのです。

「あれ? 店員さん、店員さーん」

「どうしたんだろう」

「おかしいな。あんなにケンカを止めようとしていたのに・・」

「あれ? 何か落ちてる。これは」

みると、おねだんのわりにせいのうばつぐんな、すばらしいポータブルDAC&アンプが、ゆかにおちています。


「これは、お値段の割に性能抜群なすばらしいポータブルDAC&アンプじゃないか。なぜここに」

「なんだろう」

と、おじさんは顔をあげ、何かに気づいた様子です。

「もう夕方の5時か! じゃあ彼は・・」

「なに?」

「きっと彼はアンプの妖精さんだったんだ。
 アンプの妖精さんはね、5時から7時の間は、いなくなってしまうんだよ」

「え?
 ねえどうして?」

「いなくなる前にと、僕らに、コスパのいい置き土産をおいていってくれたんだね」

「え?
 ねえどうして?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしてだろう?」



こうしてふたりは、ふにおちないものを感じながらも、ゲーミングヘッドセットを買って、おうちに帰ったのでした。
ポタアンは、おじさんが自分用に買って帰りました。

きくところによるとアンプの妖精さんは、いまもいろんなところから、わたしたちを見守ってくれているということです。



おしまい





というわけで、ヘッドホンは
・自分の好きなリファレンス曲を持っていって
・予算の中で目についたヘッドホンを試聴しまくって
・自分の耳で決めましょう
・見た目で決めてもいいです

それだけです。

おしまいです。



もしここまで全部読んでくださった方は
もう大体のオーディオ記事が読める
情報へのアクセスができるようになったかと思います。

この記事は「ワードを知るだけの記事」です。


みなさまに幸せなオーディオライフがありますように。



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