まちがいだらけのヘッドホン選び(3)~ヘッドホンのスペックを読むために~
前回までのあらすじ
https://note.com/hamachiichiban/n/n44ef47472fae
おじさんから誕生日プレゼントに「いいヘッドホン」をもらおうとしたひろし君は、
「きみにとっての”良い”とはなんであるか」
絞り込み検索を受けつづけるのでした。
まずはヘッドホンの”ハウジング部”の”形態”を決めるところまでこぎつけましたが・・
第3章:「仕様表」はインダストリアル・ノイズ・ミュージックの楽譜か
3-0 知識という名のノイズ・ミュージック
「じゃあたかし君は、「密閉型」で音漏れしにくい、外出先でも音楽を楽しめるヘッドホンがよさそうだね」
「そうだねおじさん」
「となると、
インピーダンス低め感度高めを基本にして、予算の範囲でポタアンも付けようね。ドングルで妥協したくないからね。SNだの帯域は任せてもらって大丈夫。ワイヤレスかな?有線かな?ノイキャンは?意外とパッシブでも充分じゃない?あとLDACとかaptX Adaptive?・・おれも試したいしな・・でもその路線だとイヤホンだよね。ヘッドホンなら結局有線よね、バランスよバランス。んーまあBluetoothレシーバーでも。んー。
子供の頭でもいい側圧にしないとな。
たかし君はサブスクはどこだい?ロスレスかい?プランの繰り上げ怖いかい?ハイレゾのダイナミックレンジに解像度に過度な期待をしてないかい?MQAかい?DSDかい?LSD的イマーシブオーディオに没入したいかい?」
「ぼくは風の歌を聴こう・・」
3-1 インピーダンス/感度・能率・出力音圧レベル
さてさて、ヘッドホンを選ぶため、仕様・スペック表を見てみると、よりいっそうわけのわからない語彙がたくさんやってきました。百鬼夜行です。
たかし君は、おそらくスマホにつないでヘッドホンを使うのでしょう。
そうなると、スマホのパワーでも充分に動かせるものを選ばなければいけません。
そこで見ておきたいのが、「インピーダンス」(impedance)です。
(まあ、お店に行けたら自分のスマホで試聴するだけでいいんですが)
「インピーダンス」の項目には、たとえば「32Ω」などと書いてあります。オーム・・腐海ですね。
いえ、抵抗です。
つまりこれが高いほどヘッドホンは抵抗する、電流を流すスマホ側のパワーが必要になる。インピーダンスが大きくなるほど、音が小っちゃくしか出なくなっていくのです。
逆に、高いほどノイズは乗りにくいそう。
つまりプロ仕様というか、しっかりした機材が必要なものになっていくのですね。スタジオ仕様のヘッドホンだと「600Ω」などいうクラスも。
スマホだと、32Ωくらいまでを選ぶといい、と、もののサイトに書いてありました。
さて、インピーダンスと対になるような数値が「感度」です。
これは電流に対する感度で、高いほど鳴りやすい。
「能率」「出力音圧レベル」など書き方が違うこともあります。
(書き方だけじゃなく本質的に違うのかもしれませんが・・わからない)
単位は「dB/mW」。1ミリワット当たりのデシベル(音の大きさ)。
とはいえ、
むちゃくちゃでかい音で聴きたいんだ! という方以外は、そんなに気にしなくていいでしょう。
3-2 再生周波数帯域
ヘッドホンが出せる周波数・・音の高さの幅をあらわします。
まず、ひとが聞きとれる音は20Hz~20,000Hz(20kHz)くらいといいます。
それってどんくらい、というと
例えば通常ピアノの音域は27.5Hz~4,186Hz(4.186kHz)
また人間のしゃべり声の周波数は平均的に、男声は100Hz、女声は300Hz、だそうです。
(もちろん歌声はもっと上下動。1オクターブ上の音は、周波数が2倍になります)
以下参照
歳をとると聴こえる幅(可聴域)は落ちてきます。それを利用して若者だけ聴こえる高周波のヤな音を出して、たまり場になるのを防ぐ、という都市活動がありましたね。
(↓ こちらで20代~60代までの可聴域が体験できます)
とりあえず、健康な若者が聴きとれるのも20,000Hz(20kHz)くらいまで。
じゃあそれくらいあれば充分
とはいえ
もし「ハイレゾ」音源をヘッドホンでも流したいよーというかたは、
それ以上の再生周波数帯域をスペックに求めることになるでしょう・・。
ハイレゾのことはまた今度。
3-3 S/N (SN比)
磁石とは関係なく。
サウンド(Sound)とノイズ(Noise)の比率のこと。
ノイズは小さい方がよいですな。
Nが小さい→分母が小さい→SN比が高い方が、ノイズの小さい、いいヘッドホンです。
が、これも、気になるほどのこだわりが出てから気にすればいいでしょう。
3-4 ノイズキャンセリング(ノイキャン)/ANC・PNC
ノイズキャンセリング機能。
外の音がうるさいときこれをオンにすると、騒音が小さ~くなってしまう。ヘッドホンの内部で、外音を打ち消す音を出す、魔法のような機能です。
・・というのは「アクティブノイズキャンセリング」(ANC)の説明。
ふつうに、密閉型ヘッドホンや耳栓型イヤホンで物理的に外音を遮断することも「パッシブノイズキャンセリング」(PNC)と呼びます。そんな大仰な。
さて、ANCでは、なぜ外の音を打ち消せるのか?
それは。
音は波であり、波には高い低いがあり、その高と低を逆にした(逆位相の)波をぶっつけると、
音は平たく。ゼロになってしまう!!
ということらしいです。イメージね。
ヘッドホンに収音マイクがついていて、聞きとってそれを逆位相にして発して、打ち消すシステム。
すごいですヨー。
通勤電車で・工事現場の近くで・空調がゴウンゴウン、などなど、
外音をシャットアウトしたいなら、この機能付きを検討するとよいでしょう。
3-5 付け心地│重量/ハウジング/オーバーイヤー/オンイヤー/側圧
ヘッドホンの重さ、耳の着け心地、頭の締めつけ具合、は、実は音質よりも大事かもしれません。
いくらいい音でも、もう、付けてらんないッ! となっては台無しです。
「ハウジング」は以前も書きましたが、ヘッドホンの耳周り、イヤーカップの外側の造りのこと。その中に、音を鳴らす「ドライバーユニット」が入っております。
つまりハウジングは音の反射にたいへん影響するため、材質もさまざま(プラスチック、木、竹、金属など)。こだわりのものやデザインがたくさんあります。
イヤーカップのサイズも違いがあって、
耳をすっぽり覆う「オーバーイヤー」型が多いですが、少し小さくなって、耳に乗せる「オンイヤー」型もあり。こちらだと携帯しやすいサイズになるでしょう。
そして「側圧」は、ヘッドホンの、頭への締め付け具合のこと。ヘッドバンドのしなり具合。しばらく付け続けないと判断しづらいですが、大事、大事、大事。
ちょっとキツいな・・というとき、ティッシュの箱に挟んで力が弱まるのを待つ人もいますね。
このあたりの着け心地は、耳あて(イヤーパッド)との合わせ技にもなってきます。イヤーパッドの付け替えが簡単な機種もあります。
ともかくも店頭で試着・試聴してみるのがいちばんでしょう。
3-6 持ち運び│おりたたみ/スイーベル
耳当て部分を、ヘッドバンドの内側におりたためるタイプもあります。とくに特別な呼び名はない。
持ち運びに便利です。
ほかに、耳当て部分を回転させられる「スイーベル」(swivel)機構付きのものなど。あそこを90°回転させると、平らなところに置きやすくなりますね。そういうものです。
あるいはDJが片耳で聴く用に、縦180°回転するタイプとか。
用途に合わせてお選びください。
3-7 接続方法│有線/無線
そして。なにをいまさらという項目ですが、
イヤホンジャックに挿して使う有線(ワイヤード)ヘッドホンと、
Bluetoothで使う無線(ワイヤレス)ヘッドホンと。
どんな違いがあるでしょう?
まず、ケーブルがうっとおしい / しくない。の違い。
充電切れの心配がない / ある。の違い。
そして、音質が良いめ / ちょっと落ちめ。の違い。
えーっ。Bluetoothって音質いいんじゃないの。というかたは、「前より良くなりました」というコマーシャルを、ほかの全部より良い、と取り違えているのかもしれません。ワイヤレスのほうが”技術が進んでいる感”もありますしね。
しかしワイヤレスは、音質最優先とは違う荷を負っていることはたしかなのです。それは無線でデータを送るための「圧縮」(と「伸張」)、また、ヘッドホン側があの限られた大きさの中にそれを受け取る機能・機械装置を持つことだって。
総じて、音の良さを突き詰めたいなら、有線。
ということは常識と思ってよいのでは。
ちなみに有線と無線、両方できるヘッドホンもあります・・
それと、やっぱりこの言葉を胸に留めておくべきでしょう。
すべて、比較してるアレとコレとのちがい
その「幅」が
全体のおおきな枠組みのなかで、どの程度の「幅」なのか?
そら、素人には計れません。
どんぐりの背比べの森で、延々と迷ってしまわないように。
試聴!試聴!試聴!
再生機器とのパワーバランス、頭の・耳の形との相性、キャンセルしたいノイズまみれの世界で、君はなんの音楽を鳴らすのか?
ついにお店へと出向くたかし君とおじさん。
店員の売り込みに、おじさんがはなった一言とは?
次回 「わたしスカイツリーから電波で狙われてるんでこれ以上家電増やせないんです」 につづく。
今回のとりこぼし
・「ポタアン」
・「ドングル」
・「LDAC」
・「バランス」
・「サブスク」
・「ロスレス」
・「プランの繰り上げ」
・「ハイレゾ」
・「ダイナミックレンジ」
・「解像度」
・「MQA」
・「DSD」
・「イマーシブオーディオ」
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