8/21 変わっていた先輩

　先日のこと。

　仕事上で野球部時代の先輩と顔を合わせることがあった。予想だにしていなかったことにお互い驚いたものだ。

　というより、よく覚えていたなと我ながら感心した。

　この先輩は僕が1年時に3年だった人で、当時それはもうめちゃめちゃ怖かった。

　春先、呼ばれたから参加した野球部の練習。厳密にはまだ入部すらしていない状態での初顔合わせでぶん殴られた。部位は幸い？顔ではなく、腹であり鍛えておらずだらしない腹筋をしていた他の者は悶絶していたものだ。

　当時のウチの部内にはやんわり暴力的なものがあり、軽いものばかりではあったがよく小突かれた。

　目を付けられた部員は学校で会うたびにペチペチやられていた。

　そういうのがあったので僕達は学校で先輩達に会わないよう、メタルギアソリッドよろしく周囲に気を配りながら日々過ごしていた。

　で、そういった下級生に手を出すということを積極的に行なっていたのが件の先輩だった訳だ………が、

「なんというか、感じが変わりましたね？」

　話していてすぐに気付いた。
　
　あの毒々しく刺々しい、暴力の権化みたいな覇気がすっかり無くなっている！

「そりゃぁ変わるよぉ」

　お互い大人になったということか。
　
　別に恨みを抱いていることもないしこれ以上思うことはないのだが、本人曰く当時のことを後悔、罪悪感なるものを覚えているようだった。

　そう話す口調がなんとも優しいもので違和感ありありではあったが、考え方や行動が変わるくらいの時間が経過したんだなぁと。

「あれはヤバかったよなぁ」

「えぇ本当にッ！」

　そこは強調しておいた。

　ささやかなる報復ということにしておこうか。