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買った本は「読めない」

 第170回芥川賞を受賞した九段理江さん「東京都同情塔」。以前ここにも書いたが、選考決定直後の夕刻にたまたま池袋ジュンク堂書店で見かけていながらスルーしていたところ、あっという間に品切れになり、メルカリで高額の取引にもなってしまった。いざ「読めない」となると「読みたい!」となるのが人情なのだが、まさかフリマで何千円も出すわけにもいかない。

 ところが1月24日に社内にある書店を覗いたら平積みになっているではないか。顔見知りの店員さんは「あ、なんとかきょう入ったんです」と。思わず購入してしまった。

 ところが。

 「これでいつでも読める」と安心した途端に優先順位は下がってしまう。どうしても図書館から借りていて後ろに順番待ちが長い本を“処理”しないわけにはいかない。こうして所蔵本は“積ん読”になってゆく。

 そうするうちに月刊文藝春秋の芥川賞発表号が2月9日に発売になった。前記単行本が1870円なのに対してこちらは1300円。作品全文が掲載されているだけでなく、選評や本人の受賞のことばも読める。もちろんほかの記事も面白そうだ。

 冷静になってみれば「月刊文藝春秋に全文が載る」などということは何十年も前から知っていたこと。嗚呼、それなのに。「ま、俺は装丁のキレイな単行本でじっくり読みたかったのだ」と負け惜しみで自分を慰める。

 友人に「どうしてそんなハイペースで本が読めるの?コツを教えてくれ」と真顔で聞かれたことがある。「酒を飲まない」「他に趣味がない」こともあるが、いちばんの要因は「図書館で借りると返却期限があるからどうしても読まねばならない」からだ。友人は釈然としていなかったが。

 さて、いま手許にある高橋杉雄「日本で軍事を語るということ」はまだ1ページも読めていないが、あすが返却期限だ。週末のこの2日間を没入すればなんとか読み切れるとは思うが、そうすると別の本が進まない。そして会社がある平日は相変わらずさっぱりページが進まない。

 「東京都同情塔」よ、しばらくそのまま寝ていてくれ給え。
(24/2/17)

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