“傾奇者”新庄監督に期待する
「芸能人は、歯がいのち」
これはかつてのCMの名コピー。CMでタレントや女優がきっちり七五調のリズムでニコニコしながら宣言していた。もちろん広告世界の表現であることは承知しながらも「へえー、そんなに大切なの?」と家族で話していた。
こんな昔のことを思い出したのは、日ハム・新庄剛志新監督の記者会見で見たあの歯の白さからだ。
まさに“現代の傾奇者”
衣装から奇抜だった。異様に高いシャツの襟首。スーツはホストとみまごうばかりのワインレッド。そして笑顔の際にキラッと光る真っ白な歯並び。
「優勝なんて目指しません」という発言も新庄氏ならでは。つまり「一日一日を頑張ることにまず専念する」ということなのだろうが、しっかり見出しに取られることを計算してキャッチーな言葉をくり出してみせた。ファッションを含めてテレビ各局とも“新庄節が炸裂した”と面白おかしく伝えていた。
それにしてもあの白い歯である。
ネットで検索したら2017年のスポーツ紙の記事が見つかった。新庄氏がテレビ番組で明らかにしていたのである。曰く「阪神の選手だった24歳の頃に真っ白なインプラントにしたが、その費用は2000万円。歯はスウェーデンから取り寄せたものだった」という。芸能人のいのちであることはわかっていたが、野球選手がそこまでやるという発想がすごい。
ロケットスタートは大成功
ビジネスの観点からはとりあえず大成功の会見だった。巨人・阪神の監督就任だってここまで注目はされないだろう。春のキャンプからオープン戦もマスコミ各社はこぞって取り上げることは間違いないし、観客動員アップも確実だ。
監督としての手腕は未知数で、広岡さん、野村さんといった緻密な作戦を駆使するタイプにも見えない。ただでさえロートルご意見番がいまだに古臭い精神論を振り回して“喝”を入れるようなスポーツの世界だけに、結果が伴わなければすぐに「それみたことか」のバッシングになりそうな気もする。
それでもいいではないか。
所詮はプロの興行だ、お客さんをワクワク楽しませる見せ場を作って何が悪い。閉塞した日本社会にまで風穴を開けるような縦横無尽の活躍に期待する。
(21/11/7)