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もうちょっと工夫しようよ

 メディアのミスをあげつらうネタが多くなっているこのnote。「他人の失敗を嘲笑する」という気分がまったくないとは言わないが、それよりも「マスメディア経験者としてこんな視点があるよ」と紹介する意図が大きい。

 けさのNHKニュースはなんとも不思議なものだった。

 スタジオでアナウンサーが読む「リード」の原稿が「日本酒の人気が高まっているフランスのパリで大規模な見本市が開かれました」。VTRに切り替わると現地記者の顔出しリポートなのだが、いきなり「日本酒の人気が高まるフランスのパリで大規模な見本市が開かれています。大勢の人たちが様々な種類の日本酒を楽しんでいます」とリポートしたのだ。つまり項目のおよそ30秒がほとんど同じ原稿の繰り返し。見ていた視聴者として大きな違和感があった。ちなみにこの項目のサイドスーパー(右上に掲示されっぱなしになる字幕)も「日本酒人気高まるパリで 大規模な見本市開催」。なんだかなあ。

 「顔出しリポートでは、直前のスタジオリードを想定して、それとかぶらないようなコメントを考えるべし」。これは自分が記者だったころ、そして後輩への指導で当たり前のように考えること。きょうのパリ特派員はそこをまったく考慮していない。怠慢だろう。

 それを受け取った東京の内勤記者だったらどうするか?

 とっさに考えられるのはVTRの冒頭部分をカットして「大勢の人たちが様々な種類の日本酒を楽しんでいます」だけにしちゃうこと。しかし今回のリポートは1カットで記者の顔出しからそのまま会場にパーンしていたので、記者の名前スーパーが掲示できなくなってしまうため、ダメ。

スタジオリードを変更することもできたはず。例えば「日本文化に関心が高まっているフランスでは、〇日、こんな見本市が開催されて話題になりました」とすればダブり感はない。あえてそれをやらなかったとすれば、それは漫然とアホなリポートを送ってきたパリの記者へ対するあてつけなのかもしれない。結果的にあんな珍妙なOAを作ったのだから。

 パリの記者にしても、東京にしても、「いいOAを作ろう」というあと一歩の努力・工夫が足りていない。「言われたことをやってりゃいいんだろ」というタルんだ雰囲気が現場にあるとすれば、それは放送文化の劣化だ。危惧する。
(24/9/30)

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