胃酸の問題

 ことしの人間ドックで初めて胃カメラを受診した。かなりの太さの管を喉に突っ込まれてグリグリやられる不快感は噂通りだったが、バリウムを飲むことで必ず見舞われるあの不快な便秘がないことを思えば、プラスマイナスはゼロだったのではないか。

 医者からは「特に大きな問題は見られませんが、胃酸が多いです。胸やけなどで苦しい時にはなるべく薬を飲んでください。ガスター10なんかですね」と言われた。

 なるほど。そういえば以前よりも胸焼けをすることが増えたような気がしていた。「薬は飲んだほうがいいのか」と思いながら、その後なんとなくほったらかしにしていた。

 ところが、けさはかなり苦しい胸焼けに襲われてしまったのである。

 予兆、というか“自覚”はあった。昨日は同僚の還暦祝いに会社で巨大なケーキが振舞われてこれをペロリとたいらげた。さらに夜には定期的に集合している同期との食事会で油っぽい中華ディナー。〆めの焼きそばにはほとんど手を着けなかったが、それでも「ちょっと食いすぎの日になってしまった」と反省していたところだったのである。

 このため、今朝はいつもどおり5時過ぎに起床したものの、あまりにも不調でまたベッドに潜りこむという珍しい事態にもなった。幸いその後は不快感がかなり治まったが、これから薬屋に行こうと思っている。

 これを書いていて、父親に聞いたある落語家のエピソードを思い出した。

 病篤く「いよいよ」という間際になって、落語家は居並ぶ人々に「箪笥の中にイサンが入っているから、俺が死んだらみんなで分けてくれ」と言い残した。「あの貧乏落語家にまさか遺産があったなんて」といいながら親戚たちが箪笥を見たところ“胃散”が入っていたという。

 自分の胃酸とはまったく関係ないが、「噺家としての覚悟がすごいな」と思わされる。
(23/12/27)

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