愛も恋も結婚には要らない

結婚に愛は必要ではない。必要なのは生活力と責任感。リスク分散の為に結婚する方が独身でいるより得ではないならすべきではない。自分が不幸になるだけではなくて、子どもが迷惑する。婚姻関係を結ぶのに必要なのは条件とそれを守る事で、愛が介在するかどうかはどうでもよくない?

面喰いの私の好みの容姿と犬のように忠実で優しい資産家の親を持つお坊ちゃんとは三年付き合って、結婚した。結婚後もずっと恋人同志の関係は続き、相変わらず優しくて妻に一途なイケメン夫で幸せだった。

バブルが弾けて企業のリストラが始まった頃、彼にカスタマーサービスから経理に配属願いを出すように言ったところ「えー経理暗いからヤダ」とあっさり却下された。

夫婦は大海の荒浪の中、舟を一緒に漕ぐもの。私は頑張って漕ぐけど、夫が同じペースで漕ぎたくないなら、他の舟に移って貰うしかない。当時私はチャラい大手外資広告代理店の楽しくて楽なシャンプーCMの仕事から、地味で真っ暗な環境の外資系メーカーに転職したばかり。全て生活の為だったが、バス乗車中に自分の目から涙が流れている事さえ気づかなかった程、疲弊していて、惨めだった。雰囲気が暗いとか明るいとか、どうでもいい理由で職場を選ぶお坊ちゃんの舟を降りて、手切金払って離婚した。

どんなに心が通じあっても、趣味が同じでも、一緒にいて楽しくても、大好きでも、資産家の息子の夫は実家の親の面倒をみる必要はないが、貧乏なシングルマザーの母を一生養う責任がある私とは立場が違う。好きとか嫌いとか仕事を選り好みする余裕が彼にはあって、私にはない。

愛より恋よりこの世で一番大事な人は自分。30でやっと気がついた。

離婚一年後に彼が企業をリストラされたことを知り、「忠告したのに。あゝやっぱり別れておいて良かった」と安堵した。幾ら外資系企業で一般女性より高給貰っていても、自分と親の面倒だけでいっぱいいっぱいだもの。リストラされたお坊ちゃんまで養う余裕はなかった。

リストラ直後合コンで知りあった女社長の家にころがり込み再婚した彼は「実家には帰りたくないし。僕だって暮らしてかなきゃいけないから」と半泣きで言い訳してたっけ。自分が甘ちゃんだから、稼ぐ女が好きなんだろう。

今の夫とは昔からの知り合いで、条件(健康、家の立地など)で選んだ。前夫同様に私にゾッコンだけど、違うのは私の事を全くわかっていないこと。一体私の何処がそんなに好きなのか、、、謎。きっと勝手に「こういう女」と夢を描いているのだろう。否定もせず好きにさせてほっとく。「私は本当はこういう女です。」と誤解を正す気持ちがないのは、最初からわかって欲しいとか、夫と心を通わせたい、という願望がないからで、私の邪魔をしたり、煩わされる事をしない限りは、余程の蛮行がない限り離婚する予定はない。何故なら、離婚は子どもにとって相続財産が大幅に減る可能性大な悪夢でしかない。自分が親の離婚で親戚たらい回しにされて苦労させられたので、子どもはぬくぬくした環境で育てたい。

所詮別々の仕事を持っていて、子育ても終わると配偶者とは極力一緒にいる時間も必要性もなくなるので、趣味も好みも異なる他人と暮らしていても相手の存在自体が気にならない。愛犬と一緒に過ごす時間の方がよっぽど長いし、愛のない配偶者や、成人しても反抗期で親の脛を齧りつづける子どもと違い、動物は無味乾燥な人生に喜びを与えてくれる。人は行いによって嫌いになるけれど、愛犬に対する愛情は日々増すばかりで、ウンザリする理由が人と違って一つも思い浮かばない。




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