性被害者が傷モノと呼ばれた時代

親友が塾の帰り道に公園で襲われて、その場にいた警察官に連れられて帰宅した。家に入るなり母親に「塾サボって!」といきなり殴られた。そもそも塾サボってないのに。田舎出の一般家庭の女の子のたまたま結婚した商社マンが出世が早く海外赴任で、香港、インドとお手伝いさんつきの豪邸で暮らすうちに彼女に選民意識が芽生えて四人の子にはエリートになるか、エリートと結婚するかを強く望むようになったらしい。当時の価値観《性被害者=傷物》の中で、娘の商品価値が下がったイライラを母は襲われた娘本人にぶつけたのでしょう。親友も「私は汚い女」と思い込み、一時家出して歌舞伎町で妹と働いていた。結局親に連れ戻されて、何事もなかったかのように高校に戻り、四年大学卒業後も親の嫌う非エリートとばかり交際して結婚した。面白いのは親に反発して一緒に家出して歌舞伎町で働いていた妹の方は、短大を出て腰掛けで働いた後に銀行員とお見合い結婚したが、より高みを目指し海外留学中に目をつけたオックスフォード大教授とステップアップ再婚して新しい夫と凱旋帰国した。妹の価値観は見栄っ張りの母親そっくり。親友は母親に対して憤りを抱えながら老母の介護をしているのは、高校生だった彼女を傷つけた事を心から謝罪してほしいのだろう。今際の際で善人になって反省して謝罪するのはフィクションの世界だけなのに。

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