僕の好きな詩について 第十三回 石垣りん

こんにちは。瞬く間に9月ですね。近頃 認識が時の流れの早さについていきません。

さてはて、好きな詩について言いたいことを言うnote、第十三回は石垣りんさんです。

いざ。
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「表札」石垣りん    

自分の住むところには
自分で表札を出すにかぎる。
 
自分の寝泊りする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。
 
病院へ入院したら
病室の名札には石垣りん様と
様が付いた。
 
旅館に泊まつても
部屋の外に名前は出ないが
やがて焼場の鑵(かま)にはいると
とじた扉の上に
石垣りん殿と札が下がるだろう
そのとき私はこばめるか?
 
様も
殿も
付いてはいけない、
 
自分の住む所には
自分の手で表札をかけるに限る。
 
精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない

石垣りん

それでよい。
         

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この詩が石垣りんさんの代表作と言われているのですが、作者の名前がこんなに格好良く代表作に挿入される、というスタイルは他に類を見ません。(ご存知でしたら教えてほしいです。) 

石垣りんさんは銀行員と詩人の二足の草鞋を履くという珍しいキャラクターで、特に初期の作品にその真面目さ・堅苦しさが反動になって文体に投影されているように僕には感じられます。

ちなみに、石垣りんさんが79歳の時作詞した合唱曲「この世の中にある」の歌詞が僕は非常に好きです。是非聞いてみてください。現代詩にメロディがつく感動というのは得も言われぬものです。

https://youtu.be/uaIt-YA8qZE

「この世の中にある」
作詞 石垣りん 作曲 大熊崇子

この世の中にある
たった一つの結び目
あの地平線の果てのあの光の
たった一つの結び目

あれを解きに私は生まれて来ました
私は地平線に向かって急いでおります

誰が知っていましょう
百万人の人が気付かぬちょっとした隙に私はきっと成し遂げるのです

―まるで星が飛ぶように
「さようなら人間」

私はそこから舞い出るひとひらの蝶
軽やかな雲
さては溢れて止まぬ泉
吹く風
ああ!
そこから海が山が
空が
果てしなく開け
またしてもあの地平線行けども行けども…

#詩 #現代詩 #感想文 #合唱 #石垣りん #表札

いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。