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この支配からの(幼稚園編)

『卒業』

タイトルに呼応する唯一の単語でもある上記の言葉。
幼・小・中・高・大と、5度も卒業を経験しているはずだが、そこに感動的な思い出はあっただろうか?
死の直前に見ると言われる走馬灯をより鮮明なものにするためにも、今のうちから思い出の形状記憶を確固たるものにしておこうかしら。

早速だが、幼稚園の卒業式は何ひとつ覚えていない。

3年間の幼稚園生活の断片的な記憶はある。
変わった幼稚園に通っていたため、年長さんになると『論語』を音読する授業があったことや、剣道の授業があったこと。
あと、園バスで通園していた私のお迎えを、どうしてもその日に行くことのできない母に代わって祖母が来てくれたことが一度あったこと。ばあちゃん、バス停に園バスが来る30分前からスタンバイしてくれていたのに、園バスがどれかわからなくて私の乗っていたバスをスルーしたっけ……。私も私でガン寝キメててバス停で降りなかったから、心配した同乗の先生と園にリバースされたっけなぁ……。母さんは園からの鬼電に焦ったらしいけど、今となっては良い笑い話である。
そんなくだらないことは割と覚えているのに、ビッグイベントである『卒業式』に関しては、1回宇宙人に連れ去られたの?と疑いたくなるレベルで記憶がない。

卒業に関して覚えていることを強いて挙げるのなら、通っていた幼稚園では、3年間の思い出をまとめたVHS(懐かしすぎる響き!)を作成する企画があり、そこで『将来の夢インタビュー』というものを撮影したことである。教室の隅の方で名前順に1人ずつ撮影されるのだが、インタビュアー役の先生が「〇〇ちゃんの将来の夢はなんですか?」と尋ねると、女の子たちの回答は「おはなやさん!」「ケーキやさん!」の2強だった。
そして、私も例に漏れず「ケーキやさん!」と答えたい純情可憐な幼女(仮)だった。あの頃、ケーキ屋さんになれば、無限にケーキを食べられる権利が手に入ると思っていたんだよなぁ。

しかし、私はそれ以上に人とカブることを嫌っていた。
人一倍、自我が強かったのだと思う。
みんなと同じ回答をして没個性したくない……私は『一味違う子』でありたい……
あの頃の思考回路が果たしてそうであったかは謎のままであるが、とにかく「ケーキやさんになりたいです」とだけは言いたくなかったことは確かだ。
悶々と悩んでいるうちに、インタビューの順番が回ってきた。

「もちこちゃんの将来の夢はなんですか?」
やさしくて大好きだった先生がそう尋ねた。
「わたしは、くだものやさんになりたいです!」

周りと格の違いを見せつけたすぎたあの頃、私は友人たちのケーキ屋に原材料を売る『卸売業者』への就職を希望したのだった。
なんて可愛げのない幼女だろう。
おませとか、そんな生ぬるいもんじゃない。
悪。絶対悪である。齢5つにしてこのマウントの取り方は悪党以外の何者でもない。

可愛くないこんな子どもが、今のダメ人間に成長するまであと18年。

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