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夜明けと夢

大学生の頃の話。

私の属していたサークルでは、山梨の合宿所で毎年3泊4日の夏合宿を行っていた。
サークルの合宿は部活のそれとは異なり、バーベキューや花火を仲の良い仲間たちと楽しむという非常に気楽なものであった。有意義な宵を過ごした後は大浴場で汗や汚れを流し、ラフな部屋着に着替え宴会場に集合して盃を交わす。これが定形だった。
ただ、最後の夏合宿の夜は特別だった。4年生ということもあり、充実感の他に学生最後の夏が終わってしまう虚無感があった。この感情は私以外の同期も持っていたようだ、「ちょっと静かな所で飲み明かさないか」と誘われた。
宴会場の喧騒を避けた客室、少しの酒で喉を潤しながら我々は様々なことを語る。働くことへの不安や皆と離れる寂しさ、そして夢のこと。「こうなりたい」「いつか絶対」、そう語る皆の瞳は不安を吐露した数刻前とは打って変わってきらりと輝いていた。
朝5時、あの部屋から見えた朝日のように。

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