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ウルトラポジティブの洗礼とアクセプタンス

 年が明けに配信が始まったこんまりこと近藤麻理恵さんの KonMari 見たさに、長いこと躊躇していた Netflix に足を踏み入れてしまった。彼女の著書が日本でベストセラーになっていたのは知っていたが読んだことはなく、ただ「ときめくものだけ残す」という独自のお片づけメソッドは見聞きしていたくらいなのに。なのに。番組の作りの上手さもあってか、全エピソード夢中で見てしまった。
 そこで勢いがつき、前々からSNS上で薦めている人が多かったクィア・アイも完走。こちらは2シーズンで16エピソード。仕事から帰ってきたらずっとMacの前にいる。

 前者はごみ屋敷レベルの散らかった家が劇的に片付くし、後者は服から髪型から家の中のインテリアまで総取り替えするので、絵的にものすごいインパクトがある。けれど何よりすごいのは依頼者の心持ちまで変えてしまうところ。いや、実際のところは演出でそう見えてるだけって意見もあるかもしれないが、登場時とエンディングでは彼らの表情が全然違うのはわかる。
 KonMariは、アメリカ人からみたらとっても小柄で、多分年齢不詳の妖精さんのようなこんまりが通訳の飯田さん(この方もまりえさんで、番組内ではイイダと名乗り続けている素敵な人)と一緒に、散らかって途方に暮れている家に乗り込む。クィア・アイは、美容、ファッション、インテリア、料理、文化それぞれの道のプロのゲイ5人だ。(文化って何だ?って最初に思ったけど、見てるとすごく大事な役割だとわかる。でも文化ではない気がする。適当な言葉がまだ見つからない。)とにかく騒がしいし、口が悪いし、プロの仕事をしながらもずーーーーっとわちゃわちゃ、きゃっきゃしてる。大好き。

 どちらの番組も、ホストはまず依頼者に寄り添い、依頼者の今を見つめる手助けをする。この部分が丁寧だからこそ、見ているこちらもぐっと引き込まれるのだと思った。自分に助けが必要だなんて思ってないと、最初は斜に構えてる依頼者もいるが、それでもホストは話しかけ続ける。
 日本にも奥様、亭主改造とか、お部屋改装の番組企画って前々からあったけど、どちらかというとプロのスゴ技を余すこと無く見せつけることに力点が置かれていたように感じる。例えばKonMariの場合、家が片付いていないことだけが問題なのではない。そこには家族の関係性の問題だったり、個人の気持ちの整理の問題だったり、何か結びついているものがある。クィア・アイは、かなり深刻な問題を抱えて途方に暮れている依頼者も出てくる。実は大学を卒業出来ていないことを未だに親に告白出来ずに、仕事もせずに引きこもってテレビゲームしかしてない若者とか。いやよく出演しようと思ったなとむしろこちらが驚いたなそのエピソードは...。

 この2つの番組、ホストたちに共通するのは、ウルトラポジティブであることとアクセプタンスだ。依頼者がどれだけ卑屈になろうが、途方に暮れようが、とにかく寄り添って励ます。絶対やり遂げられる、あなたの未来は明るいと語り続けるポジティブさたるや。
 そしてアクセプタンス。まず依頼者の現状、気持ちをホストが受け入れて、依頼者に現実を受け入れさせる。そして依頼者は風変わりなホストたちの意見を受け入れて変わっていく。もちろん変えなきゃいけないところがあるから出ているのだが、ホスト達も依頼者の意思は受け入れる。全否定して全取り換えにもっていかない。こんまりは、自分のメソッドと違うやり方を望む依頼者の気持ちを繰り返し確かめて、その気持ちを尊重しさえする。

 行き詰まった状況の依頼者が最初の一歩踏み出す時に、強い力で腕を引いたり背中を押してくれるのは、この強烈なキャラクターのホストたちなのだが、次の一歩は依頼者本人の意志と力によって踏み出されているのをこちらは見ることができる。正直こっちも泣きそう。
 他人の未来を否定しない。応援して祝福する。これが娯楽番組として完成されているところもすごいなあと思った。どちらも決してお涙頂戴ではなく、クィア・アイなんて何度も吹き出しながら見てる。

 KonMari に次のシーズンがあることを信じてるし、今ちょうど東京で撮影をしているらしい(よりによって東京!!めちゃくちゃ嬉しい!)クィア・アイのスペシャルシーズンが既に楽しみでしょうがない。こうやって人はまんまと NetFlix を生活に取り入れていくんだな。
 でも楽しいし、元気になるし、ときめくからしょうがないよね。

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